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記事2016年12月13日 2394号 (1面) 
第10回私大等振興検討会議を開催
地方の私大の経営環境悪化
複数の大学連携・統合など検討
地方自治体との踏み込んだ連携を求める意見も

文部科学省は12月7日、同省内で「第10回私立大学等の振興に関する検討会議」(座長=黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長)を開催した。  今回は、(1)「地方自治体における高等教育の振興」を議題に、人材育成や知の拠点機能向上、県内への人材定着等を目指して高等教育振興政策を進める長野県の信州高等教育支援センター(平成28年4月1日設置)の取り組み等を、轟寛逸・県民文化部こども・若者担当部長から聴取、意見交換を行った。また議題(2)として、学校法人の経営の改善について、これまでの議論の整理等を基に審議した。  議題(1)に関しては、轟担当部長が長野県は大学進学者の県外流出率が82・6%と全国6位の高水準にあり、県外流出を少しでも食い止めるため各大学の改革の方向性に沿ってオーダーメードの支援を行っていること、大学間連携、産学官連携を進め、高校生に発信を続けていることなどを説明したが、上田市の長野大学が平成29年4月に、また茅野市の諏訪東京理科大学が翌30年4月にそれぞれ私立大学から公立大学化する状況等も報告した。  現在、長野県内の9大学(20学部)の入学定員の総数は3368人。うち国立の信州大学、公立の長野県看護大学の2校で2058人を数え、残る私立7大学の入学定員総数は1310人に過ぎない。しかも30年4月には長野市の県立短大をベースに長野県立大学が新設される予定で、私立大学・短期大学にとっては極めて厳しい経営環境となっている。  そうした状況に同検討会議委員からは、学校法人の経営の改善問題も絡んで、国公私立大学間の授業料格差が私立大学進学への障害となっていることや、私立大学の公立大学化ラッシュの前に公平な競争環境の整備、高等教育のグランドデザインづくり、私学助成額の積算に学生数や教員数以外の要素を加える必要性が指摘されたほか、小規模の学校法人ほど専任教員比率が重くのしかかり、経営を圧迫している実情や、地方都市のある私立大学が学生確保を目的に都市部に移動した場合、地方都市の損失(学生が地元に落とす金額)は極めて大きいことから、地方自治体と私立大学とのさらに踏み込んだ連携(自治体の私大経営への参加、財政的支援、卒業生の採用等)が必要だとする意見が聞かれた。  さらにこれまでの議論の整理には、規模の利点を生かすため、複数の大学の連携・統合方策として、企業の場合でいう「ホールディングカンパニー型式」の採用の検討を求める意見が記載されているが、委員からは私学同士にとどまらず、国公立も加えた連携・統合のメリット、デメリットの整理を求め得る意見も聞かれた。  医療や福祉の分野では経営効率の向上等を目的に非営利ホールディングカンパニー型法人の制度化が進められている。  このほか経営困難な学校法人の取り得る選択肢(自助努力/連携・統合・合併/再建〈民事再生手続・私的整理[再建型]、倒産ADR[特別調停、事業再生ADR]/清算〈破産手続、私的整理[清算型])のメリット、デメリット、課題等が説明されたが、委員からは、「破綻処理問題も重要だが、私大振興の議論はどういう予定か。破綻は全体の中で捉えるべきだ。また大学だけで学校法人全体に関わる問題を議論してよいのか」といった意見が聞かれた。  これに対して文科省の村田善則・高等教育局私学部長は、「(私大の振興に関しては、高等教育のグランドデザインづくりの議論を始めた)中央教育審議会大学分科会と連携しながら議論していくため、学校法人のガバナンスや経営の問題を先に議論している。年明け以降、私大の振興について議論していく。(学校法人全体に関わる)制度改正となれば高校等法人にも影響する。その場合は状況に応じて関係者から意見を頂く考え」と答えた。このほか学生数の拡大期を前提とした私学助成の在り方の見直しを求める意見、学校法人が経営破綻した場合、現行制度では学生の授業料(債権)は低い順位のため、ほとんど弁済されない状況だが、それでよいのかといった意見が聞かれた。

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