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記事2016年12月13日 2394号 (1面) 
私大の受託研究収入非課税措置を拡充
自民党公明党 平成29年度税制改正大網まとまる
ほぼ“非課税”の扱いに
教育資金一括贈与篤志家への対象拡大認められず

自由民主党と公明党は12月8日、「平成29年度税制改正大綱」を策定した。A4判で約140ページにもわたる膨大な内容だが、このうち私学関係では、(1)私立大学が行う受託研究の受託研究収入の非課税措置の拡充【法人税等】、(2)現物寄附へのみなし譲渡所得税等に係る特例措置適用の承認手続きの簡素化(内閣府・厚生労働省との共同要望)【所得税等】、(3)試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充(経済産業省等と共同要望)【法人税等】、(4)教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の子供の貧困対策への拡充のうち、領収書の提出方法の見直し(内閣府との共同要望)【贈与税】、(5)退職等年金給付の積立金に対する特別法人税の課税の停止措置の適用期限の延長(厚生労働省等との共同要望)【法人税等】の5点が認められた。


このうち、(1)の、文部科学省と日本私立大学団体連合会がその撤廃を強く要望していた、私立大学が行う受託研究が非課税となる二つの要件のうち、「当該研究の成果の公表」に関しては、新たに「当該研究の成果の一部又は全部が大学に帰属」との要件が設けられ、現行の「当該研究の成果の公表」のどちらかを選択すればよいこととされ、もう一つの要件「実施期間が3カ月以上」は廃止とされることになった。無条件で非課税の国立大学法人と同じではないが、「当該研究の成果の一部又は全部が大学に帰属」との要件のみならば、民間企業との受託研究契約で知的財産権の関係から研究成果の公表が足かせとなっていた状況の解消につながり、要件はほぼ撤廃されたと言える。 「当該研究の成果の一部又は全部が大学に帰属」との要件は、知的財産権といった内容を想定したものではなく、研究データの一部でも該当する。  政府の「日本再興戦略2016」では、大学等に対する企業の投資額を現在の3倍に拡大する方針が示されていたが、今後、私立大学において民間企業からの受託研究の拡大が期待できそうだ。  現行制度では、私立大学の場合、二つの要件(当該研究の成果の公表、実施期間が3カ月以上)とも満たさないと法人税法上の収益事業の請負業として整理され課税対象となってしまう。  (2)の現物寄附へのみなし譲渡所得税等に係る特例措置適用の承認手続きの簡素化は、個人が現物寄附を行った場合、一定の要件を満たせば、みなし譲渡所得税の非課税措置の特例措置適用の承認手続きが大幅に簡素化されるが、その特例を、現行の文部科学大臣所轄学校法人(大学法人等)に加え、都道府県所轄学校法人(高等学校等法人)にも拡大、公益法人等への寄附の一層の促進を図るもの。  (3)の試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充に関しては、民間企業の研究開発投資の維持・拡大に貢献し、民間企業の競争力を強化するため、オープンイノベーション型に係る手続きの簡素化等の運用改善(控除対象費用の限定廃止)、大学の書類作成等の事務負担の大幅軽減等、4項目の制度改正が認められた。  (4)の教育資金の一括贈与では要望していた篤志家にも対象を広げること(現行は祖父母が対象)は認められなかったが、必要となる領収書を紙媒体のみならず、電子媒体でも金融機関に提出することが可能となり、同制度の利用者の利便性が向上する。  (5)の退職等年金給付の積立金に対する特別法人税の課税の停止措置の適用期限の延長については3年延長が認められた。文部科学省が要望していた「災害からの復旧時における学校法人への個人寄附に係る税制優遇措置の拡充」(税額控除も選択可能)【所得税】、幼稚園・保育所等に土地を貸与した場合の非課税措置の創設(内閣府、厚労省との共同要望)【相続税等】は認められなかった。

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