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記事2016年10月23日 2389号 (1面) 
私立小、中学生に公的支援要求
文科省が平成29年度概算要求
経常費補助は1059億円へ増額要求
私学3団体全国大会開き、満額実現を要請

日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長=富士見丘中学高等学校理事長・校長)、日本私立小学校連合会(小泉清裕会長=昭和女子大学附属昭和小学校長)、日本私立小学校中学校高等学校保護者会連合会(中村良彦会長)の3団体は例年、来年度の政府予算案編成が大詰めの段階を迎える暮れに、都内で与党・自由民主党の国会議員を招いて「私学振興全国大会」を開催しているが、今年は11月29日、東京・港区の東京・メルパルクホールを会場に同大会を開催する。当日会場には全国から私立小、中学・高等学校の校長や児童生徒の保護者等総勢約1600人が参集し、文部科学省の私学関係概算要求の満額実現や教育費負担の公私間格差の是正等を自民党国会議員に要請する。


平成29年度の私学関係補助金や事業等に関して文部科学省は、今年8月30日、来年度実施する事業の計画や必要な予算額等をまとめた「概算要求」を財政当局に提出している。  その中では、私立高等学校等に対する国庫補助の中核となる「私立高等学校等経常費助成費等補助」について、前年度比35億円増の1059億円を要求している。生徒等1人当たり単価で前年度比1・2%の増額要求となる。  同補助は、都道府県が私立高校等に私学助成金を出した場合、地方交付税措置(使途に限定がない)とともに、都道府県の私学助成の財源になるもの。その国庫補助の中では補助単価引き上げを求めたほか、グローバル人材や情報活用能力の育成など次世代を担う人材育成やアクティブ・ラーニング等による教育の質の向上に取り組む学校への支援を強化する予定。  また、私立学校の施設・設備整備の推進に前年度比297億円増の402億円を要求している。これらは私立大学等と併せての額。  297億円の増額要求は耐震化等の促進のために前年度比180億円増の225億円を、教育・研究装置等の整備には同117億円増の176億円を要求している。  225億円の内訳は、耐震改築(建替え)事業が135億円、耐震補強事業が78億円、その他耐震対策事業(非構造部材等、利子助成)が13億円。平成28年度までの時限措置となっている耐震改築補助制度を延長することも要望している。このほか融資制度もあるが、私立学校施設の耐震化率は国費等で集中的に耐震化を進める国公立学校に届かない状況で、今年4月現在、国公立学校では耐震化率が約98%となっているのに対して、私立高校等では約86%、私立大学等では約89%にとどまっており、政府の平成28年度第2次補正予算案でも私立学校の耐震化等防災機能強化に301億円が計上されている。  ところで文部科学省の平成29年度概算要求で画期的な事業と言えるのが、新規の「私立中学校等に通う児童生徒への授業料負担の軽減」で、要求額は12億8300万円。  家庭の経済事情にかかわらず私立小・中学校の多様で特色ある教育を選択できるよう、低所得世帯を中心に授業料支援を行うもの。私立小中学校に通う児童生徒のうち、約1万1千人が年収400万円未満の世帯。  今回の新規事業では、高校等就学支援金の場合、支給額が割り増しされる所得層に該当する年収590万円未満程度以下の所得層を支援する。  私立小中学校には一定数の低所得世帯があり、そうした世帯の子供たちにも学校選択の自由を保障する仕組みだ。  国公立の中等教育学校に進学するケースを考えてみると、就学指定された地元の公立中学校を辞退して特別な教育を行う国・公立の中高一貫教育校に進学するが、そうした国公立生は教育基本法や学校教育法によって授業料は無償とされている。一方、同様に地元の公立中学校を辞退して私立中学校に進学した生徒には何ら経済的支援策はなく、公的奨学金すらないのが現状。教育の格差が貧富の格差を再生産しているとの指摘があり、教育費負担軽減に政府は力を注いでおり、専門学校生や不登校生にも公的支援の波が広がっており、そうした中で私立小学校と中学校への支援が考慮されずに来ていた。  そのため日本私立中学高等学校連合会等は政府や自民党等に粘り強く公的支援制度の創設を要請してきた。  今回、概算要求に盛り込まれた事業は私立中学校等に通う児童生徒へのセーフティーネットの構築の観点から授業料負担軽減を行うもので、対象学校種は、私立の小学校、中学校、中等教育学校(前期課程)、特別支援学校(小学部・中学部)。  支給額(年額)は年収250万円未満程度(市町村民税所得割、非課税)で14万円、年収250万〜350万円未満程度(同、5万1300円未満)で12万円、年収350万〜590万円未満程度(同、15万4500円未満)で10万円。  年収590万円未満程度以下の支援対象者は約1万2千人に上る見込み。29年度の対象は1年生のみ。以降、学年進行で対象学年が増えていく予定。支援のスキームは、支援金を学校法人が代理受領し、授業料と相殺する、既存の高校等就学支援金と同様な仕組みとなる予定。

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