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記事2016年10月13日 2388号 (1面) 
特区推進本部 評価・調査委 ウィッツ青山学園高問題討議
設置会社等への非難相次ぐも制度見直しに踏み込んだ議論なし

政府の構造改革特別区域推進本部は10月7日、都内で第34回評価・調査委員会(樫谷〓夫委員長=公認会計士)を開き、「学校設置会社による学校設置事業(特例措置番号816)」について検討した。伊賀市が構造改革特区制度を活用して設置認可した株式会社立広域通信制高校・ウィッツ青山学園高校(平成17年に開校)での極めて不適切な学校運営や、同校を舞台にした高校等就学支援金詐欺事件が発生したことを受け、8月1日、内閣総理大臣と文部科学大臣は連名で特区の適正実施を求める措置要求を伊賀市の岡本栄市長に送付、9月30日付で伊賀市が回答を提出したことなどを受けて同委員会が開かれたもの。同委員会では、初めに特区事務局(内閣府地方創生推進事務局)から、伊賀市の回答の要点が説明された。回答では、同市の、学校設置会社(株式会社ウィッツ)および同校に対する変更命令や度重なる行政指導にもかかわらず、通信制生徒の適切な学習支援体制、管理・監督体制の改善には至らず、責任ある教育活動を行うことのできる当事者能力に欠けると判断したこと、また、同市の意育教育特区学校審議会からは「学校閉鎖命令を行うことが適当と言い得る状態」との答申も出されたが、地域には学校教育存続の要望もあることから、適切な教育を行い得る他の運営主体による学校教育の継続の可能性について年内を目途に結論を出す方針。しかし株式会社ウィッツが運営主体の交代に真摯(しんし)に対応せず進展が見込まれない場合には学校閉鎖命令を行う可能性もある、としている。  こうした報告に評価・調査委員会委員からは、「特区制度以前の話」「けしからん」と設置会社等を非難する意見、伊賀市の指導が甘くかつ後手に回った原因の究明を求める意見、株立学校制度のガバナンスの強化の必要性を指摘する意見等が出されたが、同特例措置(816)をどう見直していくか踏み込んだ議論は行われなかった。樫谷委員長は最後に特区事務局に今後の進捗(しんちょく)状況の報告と文部科学省に教育環境改善への支援を要請した。  伊賀市で同校の問題を担当する対策室によると、株式会社ウィッツに代わって学校運営に当たる運営主体については、既に学校法人や別の株式会社から引き合いが来ており、同市では適切な教育を行い得るかを慎重に判断していきたいと話している。しかし同時に「年内を目途に結論」を出すことや、来年度の生徒募集時期が迫っていることから早急に検討を進める意向。  この日の委員会には文科省の森田正信・初等中等教育企画課長も出席、同省が今年3月30日に策定した「広域通信制高校に関する集中改革プログラム」に沿って9月30日に「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン」を策定、それに従って今後、都道府県等の所轄庁等と協力して全国の広域通信制高校、民間のサポート校等の実地点検を行うこと、こうした問題の背景には株式会社立学校を設置認可する市町村の担当職員は兼務者を含めても1、2人と少なく指導体制が脆弱(ぜいじゃく)なこと、課題を抱える生徒のために柔軟にしている制度が悪用されたことなどを説明した。  学校設置会社による学校設置事業に関しては、今後、改善策を内閣府と一緒に検討していく考えを明らかにした。学校教育法では、国、地方公共団体、学校法人のみが学校教育法1条に定める学校(幼・小・中・高校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高専)を設置できると定めており、構造改革特区に限り特例措置として株式会社がそれらの学校を設置できる。就学支援金の詐欺事件に関しては現在も東京地検特捜部の捜査が続いている。

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