こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2015年9月3日号二ュース >> VIEW

記事2015年9月3日 2350号 (1面) 
私学助成予算 前年度比13.6%増の4899億円要求
文科省が平成28年度予算概算要求提出
耐震化対策、引き続き重点支援
経常費補助は総額3%台の伸び

 文部科学省は8月31日、平成28年度予算概算要求を財務省に提出した。文科省の来年度概算要求総額(一般会計)は、前年度予算に比べ9・8%増の5兆8552億円で、社会を生き抜く力の養成、未来への飛躍を実現する人材の養成、学びのセーフティネットの構築等の実現に向け教育等への先行投資を強力に推進していく方針。また、耐震化対策が27年度末でほぼ完了する公立学校について、施設の老朽化対策、長寿命化対策等に本格的にシフトしていく一方、私立学校については、引き続き防災機能強化の整備事業を重点的に支援していくことにしている。




 このうち、私学助成予算の要求額は前年度比13・6%、額にして587億5700万円増の4898億5400万円。前年度に続いて大幅な増額要求となったのは、施設の耐震化等の促進を中心とする「私立学校施設・設備等の整備推進事業」について前年度予算額の6倍近い500億600万円を要求したため。そのほとんどが今年の概算要求基準で新設された、「新しい日本のための優先課題推進枠」を活用しての要求だ。私立学校施設等整備関係では、そのほか高等教育局以外で22億9800万円の要求がある。

 私学助成予算の中核の「私立大学等経常費補助」は、前年度比3・87%、122億円増の3274億5千万円の要求。このうち経常的経費への支援である、一般補助は2746億7千万円、経営改革や地域発展に取り組む私立大学等に対して重層的に支援する特別補助は527億8千万円の要求。

 特別補助では「私立大学研究ブランディング事業」の新設を要求している。この事業は、学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自色を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学に経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援するもの。

 また、「私立高等学校等経常費助成費等補助」は、前年度比3・38%、34億5100万円増の1055億円の要求。内容は児童・生徒等1人当たり単価を同1・1%増額要求したほか、教育の質の向上のため、教育の国際化等を進める私立高校等への支援を拡充し、私立幼稚園等における障害のある幼児受け入れへの支援も充実する。

 「私立学校施設・設備等の整備推進事業」については、500億600万円の要求。この事業の対象は小学校から大学までと専修学校等。

 内訳は、@耐震化等の促進、私立大学等の教育研究装置・施設の整備費補助、私立高等学校等の施設整備に対する補助からなる「私立学校施設整備費補助金」443億8800万円、A私立高等学校等IT教育設備整備推進事業等からなる「私立大学等研究設備整備費等補助金」40億3100万円、B老朽校舎等の建て替え整備事業に係る借入金に対し利子助成を行う「私立学校施設高度化推進事業費補助」15億8700万円。

 このうち@に含まれる、高機能化整備費補助、防災機能強化施設整備費補助、エコキャンパス推進事業の3事業からなる「私立高等学校等施設高機能化整備費補助」は190億8740万円の要求。またAに含まれる、「私立高等学校等IT教育設備整備推進事業」については、14億9820万円を要求している。

 日本私立学校振興・共済事業団貸付事業に関しては、財政融資資金として865億円を要求しており、平成28年度は、自己調達資金と合わせ1148億円の貸付事業を実施する計画。

 このほか、今回の概算要求から特徴的な事業をピックアップすると―。

 現在、多くの教育関係者が注視している高大接続改革の推進については、前年度の1億円を大幅に上回る72億円を要求、複数大学等のコンソーシアムに委託する形で社会科学分野、理数分野、情報分野の評価手法等や、面接など教科・科目によらない評価手法等の開発を進め(8億円、新規事業)、国の教育改革の方向性に合致する先進的な取り組みを行う大学等(短大、高専を含む)を最大5年間支援(30億円、新規事業)、現行の大学入試センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入に向けて独立行政法人大学入試センターが行う作問イメージ(モデル問題)の作成、それらの信頼性・妥当性の実証的な検討、記述式やCBTの導入等に向けた検討を支援(前年度同額の1億円)していく考え。

 また、大きな社会的関心を呼んでいる国立大学改革の推進については、前年度比440億円増の1兆1553億円を要求している。うち同420億円増の1兆1365億円が国立大学法人運営費交付金。この中では三つの重点支援の枠組みを新設、各大学の機能強化の方向性に応じた取り組みをきめ細かく支援していく方針。要求額は404億円で、既に、重点支援1「地域のニーズに応える人材育成・研究を推進」(秋田大学、埼玉大学など55大学)、重点支援2「分野ごとの優れた教育研究拠点やネットワークの形成を推進」(東京外国語大学、鹿屋体育大学など15大学)、重点支援3「世界トップ大学と伍して卓越した教育研究を推進」(東京大学、岡山大学など16大学)とのグループ分けも行われている。

 「高校生等への修学支援」は前年度と同額の3909億円の要求。このうち「高等学校等就学支援金等」は3687億円の要求で、同118億円の減額。減額は、学年進行で所得制限による支給対象者が28万人減少するなどのため。支給額、加算額等は前年度と同額。「高等学校等就学支援金等」の減額分は「高校生等奨学給付金等」に振り向けることにしており、予算要求額は同110億円増の189億円。28年度は対象者が1年次から3年次にまで広がる(対象者数13万2千人増)ほか、非課税世帯(全日制等、第1子)における給付額を、国公立で3万7400円から12万9700円に、私立では3万9800円から13万8千円にそれぞれ引き上げる。13万8千円は私立(全日制等)の第2子以降と同額。このほか、学び直しへの支援や家計急変世帯への支援、海外の日本人高校生への支援等に関して、前年度比7億円増の27億円を、またマイナンバーに対応した高等学校等就学支援金事務処理システム開発に関する経費等として、同1億円増の7億円を要求している。




文部科学省の主な概算要求




○義務教育費国庫負担金等1兆5,233億円(110億円減)

○初等中等教育段階におけるグローバル人材育成222億円(19億円増)

○大学等の留学生交流の充実377億円(24億円増)

○専修学校版デュアル教育推進事業3億円(新規)

○幼児教育無償化に向けた段階的取り組み事項要求

○総合的な子供の貧困対策の推進37億円(15億円増)

○大学等奨学金事業の充実1,006億円(258億円増)

○国立大学・私立大学等の授業料減免等の充実412億円(17億円増)

○公立学校施設の老朽化対策等2,089億円(1,500億円増)

○スポーツ関係予算367億円(77億円増)

○文化芸術関係予算1,192億円(154億円増)

○科学技術予算1兆1,445億円(1,765億円増)



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞