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記事2015年9月13日 2351号 (2面) 
学長の選任・選考方法のあり方を考える
―大学ガバナンスの確立との関連で―テーマに
日本私立大学連盟 平成27年度理事長会議を開催
4大学が改革状況、課題等紹介 理事会、教職員等の関与は多様

 一般社団法人日本私立大学連盟(清家篤会長=慶應義塾長)は9月7日、東京都内のホテルでシンポジウム形式の「平成27年度理事長会議」を開催した。今年のテーマは、「学長の選任・選考方法のあり方を考える―大学ガバナンスの確立との関連で―」。当日は、この問題への関心の高さを反映して私立大学法人の理事長や常務理事ら例年を上回る約100人が参加。参加者は、4大学による発題(事例紹介)等を基に討議、自身の大学の学長選考や理事会の関与のあり方等を考えた。




 学長選考等のあり方をめぐっては、昨年6月、ガバナンス改革促進等を目的に「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が国会で成立(今年4月施行)、国立大学については学長選考の基準・結果等の公表等が義務付けられた。また文部科学省の施行通知では、「私立大学においても建学の精神を踏まえ、求めるべき学長像を具体化し、候補者のビジョンを確認した上で決定することは重要であり、学校法人自らが学長選考方法を再点検し、学校法人の主体的な判断により見直していくこと」とされた。

 大学ガバナンス問題については、26年度の理事長会議でも討議しているが、その際、学長の選任のあり方を集中的に取り上げてほしいとの意見もあり今年のテーマ設定となった。

 今年のシンポジウムでは、初めに4大学の理事長らがそれぞれ学長の選任・選考方法の改革状況や理事会の関与状況、課題等を報告、参加者との間で討議が行われたが、学長の選任等に対する理事会、教員、事務職員等の関与は私立大学の多様性を反映して大学ごとにさまざま。ただし同連盟のアンケート結果では、大学職員については学長任命に至るプロセスで関与度を強くしたいとする回答が多く、また学生に関しては関与度の高い大学では関与度を下げたいとする意見が大半を占め、学外者に関しては関与を強めたいとの意見が多く見られた。

 発題では、初めに医学部を持つ私立大学法人が、理事長指名による理事会決定や数度にわたる学長選任規程の変更を経て、現行の規程では全教員に選挙権が付与されたものの、医学部は学生の構成比率が低い半面、教員数が多いため全体の選挙有権者数の7割以上を占める状況となっていること、そのため学生数の構成比にどう配慮するのか、学長選任に理事会の関与がなかったことから今後どう関与するのか、職域別では教員数の半分近くを占める助教偏重となっていることなどが課題で、そうした課題を改善するため、講師以上の選任教員で選挙を実施、上位2〜3人を学長候補として理事会がその中から学長を決定、理事長が任命するといった三つの改革案を検討中で、約3年後の次回学長選挙から適用する予定などと報告した。

 また理工系の大学が事例紹介したが、12年後に、理工系私学のトップに立つことを目標に、学長付託型大学運営を進めている。具体的には学長候補者の所信は書面のみ、理事会は在職1年以上の専任教職員による選挙結果を追認するだけで理事会と学長の一体感がない、学長自身のリコール制度がないなどの問題点を改善するため、学長候補者選考委員会を設置し、複数の候補者に面接等を行い選考、全教職員に対する所信表明会、意向調査実施を通じて選考し、理事会に複数候補者を提案、理事会は候補者の中から学長を指名、選任することとし、実際、新学長が今年4月に選出されたとした。

 さらに昨年、選挙を経て就任した総合大学の学長が現在進めつつある、学長選考プロセスの見直し状況を、自身の学長選出プロセスを振り返りつつ報告した。同大学では従来、学長候補者(自薦・他薦)の所信表明はA4判1枚のみ(推薦文のある候補者も)。それだけでは在職年数の浅い職員は判断できないと、職員有志による公開討論会を行うことになり、また学長候補者のホームページを作成した経験から立会演説会の必要性を指摘、さらに学長が大学運営に必要な人材確保の観点から(他の職に就く前に)、学長選挙を2カ月前倒しする考えを示した。

 このほか文科系大学は学長選任方法の変遷を説明、数人の学長候補者が出てきた場合、選挙になる可能性があり、それは今後の課題とした。

 その後、会議参加者から、学長を学外から公募する可能性について質問が出されたが、参加者からは従来大学と全く無関係の人物では難しいとの意見が出された一方、学外者も含め多様な在り方を検討すべきだといった意見、また理事会だけで学長を選任するのは難しいとの意見は複数の大学から指摘があり、学生、職員の関与については、学長選任に対する関心の薄さを指摘する意見や管理職以上の職員は学長選任に関与させるべきだといった意見、米国のように学長や監事適任者をプールできる仕組みや「学長学」の必要性を指摘する意見も聞かれた。
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