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記事2015年8月3日 2348号 (1面) 
選挙権年齢等の18歳への引き下げ
自民党政調が懸念事例紹介
生徒間、生徒・教師間で注意必要
模擬選挙で公選法違反も

 選挙権年齢等の18歳への引き下げを行う公職選挙法等の一部を改正する法律が国会で成立、6月19日に公布された。

 来年6月19日に施行され、来年夏の参議院議員選挙から高校3年生のクラスにも有権者が誕生することになるが、自由民主党政務調査会は7月8日、「選挙権年齢の引き下げに伴う学校教育の混乱を防ぐための提言」を公表している(前号1面参照)。その中では学校のクラス等で発生が懸念される同法違反事例が紹介されている。そのいくつかを紹介する。

 事例1 18歳の生徒が17歳の同級生に「今日、候補者の演説会を手伝うけど、一緒にやらない?」と依頼、一緒に候補者の演説会を手伝った。↓17歳生徒は公職選挙法第137条の2第1項違反に問われる恐れ(単純労務作業なら可)、候補者も同法違反の恐れ。

 事例2 18歳と17歳がいる同級生のSNSグループで、17歳生徒が「候補者の▽▽さんは、とても立派な人らしい。18歳の人は彼に投票して」と書き込み、候補者の選挙運動のメッセージをSNSなどで広めた。↓17歳生徒は公職選挙法第137条の2第1項違反に問われる恐れ。

 事例3 18歳生徒が教師に「先生、次の選挙でどこに投票するの?」と尋ねた際、教師は「○○党の政策に賛同しているから○○党に投票するつもり」と答えた。↓教師が意図的に生徒を特定の党を支持するように誘導するのであれば、教育基本法第14条第2項違反。教師が特定の政党・候補者への投票まで呼び掛ければ、公職選挙法違反。

 事例4 生徒が、「自分の親が今度立候補するので投票して」と学校内で教師や18歳同級生に呼び掛ける。また同級生に「投票してくれたら食事おごるから」と言う。↓選挙の公示・告示前ならば、生徒は選挙期間外に選挙運動を行ったことになり事前運動に該当し公職選挙法第129条違反に問われる恐れがあり、さらに18歳の同級生に立候補者を当選させるために飲食の無償提供をすることについては、選挙人に対する利益供与の申し込みに該当し、選挙期間内外を問わず公職選挙法第221条第1項第1号の買収罪に問われる恐れ。特にこの生徒は、立候補者の子に当たるため、18歳以上で買収罪により禁錮以上の刑に処せられた場合(執行猶予を含む)は、連座制が適用される恐れがある。

 また選挙運動に関し、飲食物を提供した場合は、公職選挙法第139条にも問われる恐れ。

 事例5 実際の選挙に合わせて模擬選挙を実施する際に、実際の選挙の開票前に模擬選挙を行った結果を生徒に公表した。↓選挙期間前や期間中に行った模擬選挙の結果を選挙期間中に公表することは人気投票の公表に当たり、公職選挙法第138条の3違反に問われる恐れがある。

 事例6 生徒が投票日に部活動の試合があるため、平日に期日前投票に行きたいので公欠にしてほしいと申し出た。↓公欠ではなく、時間を見つけて投票に行くよう指導することが必要。

 事例7 部活動に属していた卒業生が選挙運動に利用する目的で、同じ部活動の後輩の高校生に学級や部活動の名簿を渡すよう依頼、後輩の高校生が名簿を渡した。↓学校で作成し、生徒に配布している名簿を選挙運動に利用する目的で譲渡することは目的外使用で適当ではない。学校はこうした場合に断るように生徒を指導、同窓会等にこうした依頼をしないよう求めることが必要。

 こうした状況の発生が懸念されることから、文部科学省では昭和44年10月31日に発出した初等中等教育局長通知「高等学校における政治的教養と政治的活動について」の見直し作業を進めており、早ければ9月にも新しい通知が発出される見通し。また文部科学省と総務省では副教材の作成も進めている。



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