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記事2015年7月23日 2347号 (1面) 
「中間まとめ」の素案を審議
高大接続システム改革会議を開催
3ポリシーの一体的な策定義務化へ
認証評価制度改革も提言

 文部科学省の「高大接続システム改革会議」(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)は、7月13日、同省内で第4回会議を開き、夏ごろを目途に策定する「中間まとめ」の素案について審議した。「中間まとめ」は、高大接続システム改革実現のため、高校教育改革、大学教育改革、大学入学者選抜改革について具体的方策を提言する予定だが、この日の素案審議では、大学教育改革、大学入学者選抜改革を取り上げ、高校教育改革に関しては新学習指導要領等の議論が中央教育審議会で進行中のため、次回(8月5日)以降に素案が提示され、審議することになった。




 この日、事務局(文部科学省)が示した素案は高校教育改革部分を除いて21ページ。このうち大学教育改革に関しては、小・中学校でのグループ学習や探究的な学習、高校で今後実施が期待されている課題発見・解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(アクティブ・ラーニング)を受けて、大学では個々の学生の主体性をさらに引き出す多様な学びの場を創り、十分な能動的学修とそれを支える広く深い知識・技能を獲得できるようにする必要がある。そのためディプロマ(学位授与)、カリキュラム(教育課程編成・実施)、アドミッション(入学者受け入れ)の三つのポリシー(方針)の一体的策定を行い、多様な学生が新たな時代の大学教育を受けられるようにすることを求めている。この三つの方針の一体的策定を法令上義務付けることを中教審で検討するよう求めており、そうした教育が大学で行われるよう平成30年度から始まる次期認証評価期間に向けて大学認証評価制度を改革する必要性も指摘している。

 その上で、大学に対しては、初年次教育の見直し・充実、個々の学生が入学から卒業までの学修過程を見通すことのできる、体系的なカリキュラム編成、少人数のチームワーク、集団討論、反転授業等の教育方法やインターンシップ、フィールドワーク等のプログラムの充実、学修成果の具体的把握・評価方法の開発・実践、教職員の能力開発、教員の教育業績の評価の重視、TA等の教育支援スタッフの充実、ラーニングコモンズや図書館等の環境整備等に取り組むよう求めている。

 一方、大学入学者選抜改革に関しては、各大学は入学者受け入れ方針に基づき、専門高校から大学への進学を希望する者や特別な支援を必要とする者など多様な背景を持つ入学希望者がより適切に評価される多元的な選抜の仕組みの構築や、多角的評価方法の開発・実施に取り組むことが重要と指摘。その上で「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入を提言している。同テストについてはこれまでに明らかにされた実施が始まる平成32年度〜35年度まで(現行の学習指導要領下)と平成36年度以降(新学習指導要領下)を分けて実施すべきだとしており、「思考力・判断力・表現力」の能力のうち、特に問題を発見し、答えのない問題に答えを見いだしていくために必要な諸能力を重視して、それらの諸能力を評価する作問を、各教科・科目について行うことが必要としている。同会議では年末には最終報告をまとめる予定。

 7月13日の会議では素案についての説明の後、委員からは多くの意見が出された。県教育長は、大学の個別入試で各生徒の高校での学習歴を見てほしいと要望、学習過程を選抜で見ることによって高校教育現場が大きく変わることを強調。またPTA関係者も高校での学習履歴、調査書、活動報告書を入学者選抜で見てほしい、と語った。文科省は学習履歴の記載の在り方については検討していることを説明した。また、元高校長からは、「高校が主体的に進路指導できることに期待している。塾、予備校の影響は大きい。本来あるべき姿を取り戻すチャンスだ」との意見が出された。

 さらに「大学入学者選抜実施要項で個々の大学に規制をかけることは難しく、認証評価も効果があるか疑問」「学生の学業成績を評価する企業が少ない。個々の学生の学業成績が社会に評価されなければもったいない。多様性の維持をかなり意識したものにしてほしい」「高校での学習のポートフォリオを企業採用時の中心的資料にすべきだ。高校基礎学力テストは悉(しっ)皆(かい)で実施すべきだ」といった意見が聞かれた。また、新しいテストの実施の可能性をきちんと検証していく必要性を強調する意見も聞かれた。



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