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記事2015年7月13日 2346号 (1面) 
幼児教育無償化、高等教育段階の教育費軽減を
第8次提言を策定 教育再生実行会議
国公私立学校施設の整備など 投資額試算も、財源は予算重点化、寄附、税制等で

 安倍晋三総理が開催する「教育再生実行会議」(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)は7月8日、第8次提言「教育立国実現のための教育投資・教育財源の在り方について」を取りまとめ、安倍総理に提出した。提言は、同会議の過去の提言内容の実行や、我が国の成長には教育投資が必要との観点等から、その意義、これからの時代に必要な教育投資、教育財源確保の方策等をまとめたもの。




 提言は、参考資料を除いて全体で11ページ。

 大きく分けて、「はじめに」、「我が国の成長に向けた教育投資の必要性」、「これからの時代に必要な教育投資」、「教育財源確保のための方策」、「国民の理解を得るための方策」からなっている。

 このうち「我が国の成長に向けた教育投資の必要性」では、新しい知や価値の創造が成長を支える社会に転換しつつある時代の変化に対応して、我が国が産業構造を転換、経済成長を遂げるには、教育は重要で、セーフティネットの役割も果たすこと、子供の教育費負担の軽減を図ることは少子化の克服にとっても有効なこと、教育投資は将来の経済成長や社会保障・社会治安等の歳出削減にも貢献することなどを説明している。国立教育政策研究所の試算では、大学生・大学院生への公的教育投資は、所得向上に伴う税収増や失業給付の抑制、犯罪にかかわる費用の抑制等に働き、投資額の約2・4の便益をもたらす効果があると指摘している。

 その上で、これからの時代に必要な教育投資については、特に我が国にとって喫緊の課題である少子化の克服や世代を超えた貧困の連鎖の解消に大きく貢献する幼児教育の段階的無償化及び質の向上、高等教育段階における教育費負担軽減については優先的に取り組む必要があるとしている。

 具体的には、3〜5歳児の幼児教育無償化に約0・7兆円、幼児教育・保育・子育て支援の更なる質の向上(職員の配置や処遇改善等)に約0・3兆円、合計で約1兆円が必要と試算している。

 また、高等教育段階における教育費負担軽減に約0・7兆円を見込んでいる。中身は大学生等における奨学金の充実(有利子奨学金の完全無利子化、より柔軟な所得連動返還型奨学金制度の導入等)、大学生、専門学校生等の授業料等負担軽減。

 このほか、高校教育段階における教育費負担軽減(高校生等奨学給付金や高校等就学支援金の拡充)に約0・5兆円を見込んでいる。この金額は高校生等奨学給付金の支給対象を非課税世帯から年収590万円未満世帯(高校等就学支援金の加算対象世帯)へ拡大し、給付額を拡充した場合の試算。またフリースクールを含めあらゆる子供の教育機会を確保するための支援の必要性も指摘している。さらに教育内容・方法の革新による「真に学ぶ力」の育成や複雑・困難化する教育課題等に対応した指導体制の整備、「チーム学校」の推進など教育体制の構築、教育の革新を実践できる教師の養成・採用・研修の改革に約計0・2兆円、高校教育・大学教育・大学入学者選抜の一体的改革、ICT活用による学びの環境の革新に約0・2兆が必要と試算している。

 加えて、卓越大学院(仮称)の形成や成長分野を支える専門職業人養成など社会をけん引する人材育成のための大学・大学院等の機能強化、意欲と能力のある若者の留学促進及び優秀な外国人留学生の戦略的受け入れ、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化、安全・安心で質の高い国公私立学校施設の整備(約1・8兆円)を行うよう提言している。

 こうした事業に必要な教育財源の確保については、既存の施策・制度の見直し、予算の重点化、民間資金の効果的活用等を最優先で行い、それでも財源を確保できない場合には、国立大学法人における寄附金税制の一層の拡充、寄附者の名称を冠した奨学金の設立の広報・支援、若い世代を含む低所得者層に対する個人所得課税等の在り方の見直し、資産格差が次世代の教育等機会格差に繋がらないよう資産課税等の在り方の見直しなどを提言している。
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