こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2015年6月3日号二ュース >> VIEW

記事2015年6月3日 2342号 (1面) 
私学助成の更なる拡充を 5月22日、私学振興協議会を開催
耐震化促進へ支援拡充を要請
高大接続改革、18歳選挙権 問題等も討議

 清家篤・全私学連合代表(慶應義塾長)と与党・自由民主党の河村建夫・元文部科学大臣(衆議院議員)が共同代表を務める「私学振興協議会」が5月22日、都内のホテルで開かれ、大学から幼稚園までの各私学団体代表が直面している課題等について説明、出席の国会議員との間で意見交換が行われた。




 この「私学振興協議会」は、全私学連合を構成する五つの私学団体の代表と、自由民主党の文部科学(文部)大臣経験者、現職の文部科学部会長、文部科学(文教)部会長経験者の衆参両院議員が、今後の私学振興策等について協議する場として2年前に発足したもの。

 この日の協議会では、冒頭、清家共同代表が挨拶し、平成26年度政府補正予算や27年度予算の中の特に私立学校施設の耐震化への格段の支援や、税制改正では学校法人への個人寄附の税額控除要件の緩和への配慮に感謝した上で、私学に関わる忌憚のない意見、指導を要請した。続いて挨拶に立った河村共同代表は、「各私学団体の要望を聞きながら、国の期待に応える私学であってほしい。一方、私は地方創生の党側の責任者。地方にある私学の役割は非常に大きい。文部科学省にも頭の切り替えをして私学助成では地方にもしっかり目配りをしてほしいと話している。皆さんの要望を概算要求の中にしっかり反映していきたい」と語った。

 続いて挨拶した冨岡勉・文部科学部会長(衆議院議員)は、「教育改革がかなりのスピードで行われている。教委改革、高大接続、科学技術振興、教育財源捻出、18歳選挙権付与、サイバーセキュリティー人材育成などに部会で取り組んでいる。われわれは国公私立の区別をしている訳ではないが、助成金等は学校の種類によって(異なる)数値が表れている」と語り、格差是正に向けて努力していく考えを明らかにした。

 この後、清家共同代表は、各私学団体が共通する課題として、@各私立学校の基盤経費である私学助成の更なる拡充A私立学校施設の耐震改築(改修)事業促進に対する支援の大幅な拡充を要請。続けて大学団体を代表して、私立大学等経常費補助金に触れ、国立大学の運営費交付金に合わせて私学も同じように削られては、国私間の格差は残ったままとなるとし、また大学入試制度改革では、私学として今回の高大接続の提言に沿った入試改革を自律的に行っていること、そうした私学の工夫や多様な形態が後退、一律のものとならないよう要請した。

 続けて日本私立短期大学協会の関口修会長(郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は、私立短期大学は地域創生に努力していること、現在、検討が進んでいる実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関しては、国際的通用性などを考えると質の向上は不可欠なことなどを強調した。

 日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘中学高校理事長・校長)は、国の私学助成の財源措置額が地方で他の事業に流用されていることを指摘、国としての対策を要請、また私立学校の耐震化に関しては、遠いがゴールが見えてきたこと、私立中学校への修学支援制度の創設を要請、18歳選挙権問題については高校教育現場の混乱を懸念した。

 日本私立小学校連合会の伊藤宣子副会長は、東日本大震災を受けての多くの施策に感謝した上で、被災者の心のケアの必要性を指摘、また今年40年目を迎える私学振興助成法の趣旨に沿って経常経費の2分の1助成の実現、私立義務教育学校への就学支援金実施への英断を要請した。全日本私立幼稚園連合会の北條泰雅副会長(みなと幼稚園理事長・園長)は幼児教育振興法の成立によって幼児教育の無償化実現、幼稚園教諭の待遇の改善、幼稚園教育への消費税を含む多様な財源の投入を要請した。特に幼稚園教諭の待遇改善は、新制度に移行した園には3%平均の処遇改善費が手当されているが、私学助成制度に残った私立幼稚園(全体の82%)にはそうした手当がないことから、緊急のお願いとした。





地方創生 地域の協議に早く参加を

 出席の議員からさまざまな意見




 こうした私学の要請等に議員側からはさまざま意見が出された。


 義家弘介・元文部科学部会長(衆議院議員)「18歳選挙権の法案は通る。私学には主権者教育をリードしていってほしい。モデルを私学から発信してほしい。地方創生ではプランに対してお金がつく。地方の私学は首長部局と連携して発信してほしい」


 遠藤利明・元文部科学部会長(衆議院議員)「私学はもっと独自性を出して独自の入試をやっていい。多様性が元々の発想」


 中曽根弘文・元文部大臣(参議院議員)「幼児教育の無償化は順次進めていく。今年の骨太の方針にもしっかり書き込んでくれるようお願いしている」


 小坂憲次・元文部科学大臣「(自身が委員長を務める高大接続改革に関する小委員会に触れ)夏くらいまでに中間まとめと言われている。高校普通科、実業高校と大学をいかに繋ぐか、いかにあるべきか皆迷っている。議論は広範に亘っている。急ぐことをしてはならない」


 渡海紀三朗・元文部科学大臣(衆議院議員)「皆さんの心配も当然。高大接続について(党内で)何を決めるのか。スケジュールは全て決まっているではないか。新しい高等教育機関についても結論が先にあって党内に投げられてきた。どうすみ分けるか整理が必要。地方創生では私学は産・官・学・金(融)・言(論)・労(働)による地域の話し合いに早く参加した方がいい。案を出さないとお金が付かない」


 水落敏栄・元文部科学部会長(参議院議員)「地元に学校を誘致したい」


 松野博一・元文部科学部会長(衆議院議員)は教育再生実行本部高等教育部会の5月12日の提言(本紙5月23日号参照)の概要を説明した上で、「先般、〓(※)沢一郎議員とオーストリアに行ってきた。(同国では)16歳から選挙権、18歳から被選挙権がある。高校生全員が有権者となっている。政治活動は禁止されているが、事実上、生徒会の立候補者には何らかの形で政党がアプローチするという実態もあるという話だった。相当のルールの確立をしておかないといけない」


 塩谷立・元文部科学大臣(衆議院議員)は教育再生実行本部の教育投資・財源特別部会の提言(本紙5月23日号参照)の概要を説明した上で「教育は成長戦略。財政の問題に教育は寄与する。各種控除の見直しを活用して幼児教育の無償化を一歩二歩進めたい。義務教育の私学のことも今後考えなくてはいけない」





記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞