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記事2015年6月23日 2344号 (1面) 
高校基礎学力テスト中間層以下が主対象
高大接続システム改革会議 WGの検討状況明らかに
大学入学希望者学力評価テスト
思考力・判断力など中心に評価 大学、高校教員の協力不可欠




 文部科学省の「高大接続システム改革会議」(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術会議理事長)は6月18日、同省内で第3回会合を開いた。この中で、同会議の下で「大学入学希望者学力評価テスト」と「高等学校基礎学力テスト」(いずれも仮称)を検討している新テストワーキンググループの検討状況が初めて報告された。




 この日、検討のたたき台として示されたのは、大学入試センター試験に代わり、これからの大学教育を受けるために必要な能力を測る「大学入学希望者学力評価テスト」と、高校の質保証、高校生の学習意欲喚起、高校での学習指導改善につなげる「高等学校基礎学力テスト」の「主な論点整理」(2面に掲載)。これら二つの新テストは、これまでに簡単なアウトラインは示されていたが、この日示された「主な論点整理」は、これまでより踏み込んだ内容で、高校の現行学習指導要領下でテストを実施する場合と、次期学習指導要領下で実施する場合に分けて論点を示しているのが特徴。

 このうち「高等学校基礎学力テスト」の現行学習指導要領下での実施(平成31〜34年度)では、高校生個人や学校単位による希望参加型との方針は変えていないが、対象を平均的な学力層とその下の学力層が主と初めて規定、新テストの問題については、知識・技能を中心に、思考力・判断力・表現力を問う問題も一部出題すること、正誤式や多肢選択式が中心だが多様な解答方式を目指すこと、高校生の意欲を高めることを念頭に出題、学習の目標を設けやすく、成果が実感しやすいよう10段階以上の多段階で結果を提供する、としている。

 対象教科・科目については「国語総合」「数学T」「コミュニケーション英語T」の3教科3科目(選択受検も可)が上限で、小・中学校段階の内容も一部含める、としている。新テスト導入当初は夏から秋を基本に高校2、3年生の生徒が年間2回受検できる仕組みとするが、CBT―IRT(※コンピューターを活用したテストで、異なるテスト間でもスコアの比較可能)方式を導入する方向で検討する。同方式を導入すると、実施時期、回数は制限されなくなる見通し。また、一定の推薦・AO入試を念頭に大学入学者選抜での活用も想定されている(その場合は3年次の結果活用する)。

 平成34年度から年次進行で実施される次期高校学習指導要領下では、私学も含め関係団体と意見交換し、検討を進めるが、新要領で示される必履修科目を基本に実施する。

 一方、「大学入学希望者学力評価テスト」に関しては、十分な知識・技能の修得を前提に、大学教育を受けるのに必要な思考力・判断力・表現力等を中心に評価する。

 高校の現行学習指導要領下(平成32〜35年度)では、例えば地歴・公民は単なる暗記ではなく、歴史系科目において歴史的思考力を重視し、数学、理科では知識・技能に関する判定機能に加え、思考力等を判定する機能を重視する。英語は4技能を重視して評価する。

 試験の科目数については、大学入試センター試験より簡素化する。

 問題の内容に関しては、多肢選択式の問題に加え、短文記述式や選択式でより深い思考力等を問う問題(例えば連動型複数選択問題、仮称)などの導入や、CBT―IRT導入を前提に年複数回実施できる仕組みを目指す。

 次期学習指導要領下では、地歴・公民で歴史的思考力を重視、また数学、理科では、導入が検討されている数学と理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う新たな選択科目に対応する科目の実施を検討するほか、特に重視して評価すべき思考力等に関する判定機能を強化する。教科「情報」でも次期要領に対応する科目を検討する。選抜性の高い大学が入学者選抜の一部として活用できるよう高難度の問題も含むとしている。

 こうした文部科学省等からの説明に同会議の委員からは、「高校での指導改善にどうつながるのかはっきりさせるべきだ」「高等学校基礎学力テストの参加が自由なのだから、調査書への結果の記載も自由にすべきだ」「数学Tの授業は1年生で、高等学校基礎学力テストは2年、3年生で実施する。結果、2年生、3年生でも数学Tをやることになるのか」といった意見が聞かれた。また、IRT方式の試験には数万問が必要と言われているが、委員から、また文部科学省からも高校や大学の教員の作問等での協力が不可欠との意見が聞かれた。試験問題自体は非公開となり類似問題が公表される見通し。
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