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記事2015年6月13日 2343号 (1面) 
第4回男女別学教育シンポジウム開催
5人の校長が男女別学教育の実践報告

男子校ならではの多くの経験知積める

女子を伸ばすには横の共感できる人間関係作り

教育を選択できることが素晴らしい

 男女別学の良さを全国に発信しようと開催されている男女別学教育シンポジウムの第4回が5月23日、神奈川県横浜市の聖光学院ラムネホールで開催され、男女別学の伝統校の校長による、基調講演、パネルディスカッションが行われた。主催は日本男女別学教育研究会(中井俊已代表)、協賛は東京・神奈川の私立学校等16団体。




 基調講演では二つの講演が行われた。

 最初に「男子教育について」と題して、聖光学院中学校高等学校の工藤誠一校長が講演した。

 工藤校長は、「男子と女子で能力に差はないと思うが、精神的な発達は女子に比べて男子の方が遅い。また興味を持つところも違う。例えば女子は人の顔を見る。男子は動くものが好きだ。だから山へ行って写真を撮っても滝や鳥や木を撮る。女子は風景と一緒に必ず自分や友達の顔も一緒に撮る。本校ではかなりハードな登山キャンプもする。男子校ならではの多くの経験知を積むことができると思う。また男子はその時々でいろいろな人と付き合う。ネットワークを広げて強くしていくことは将来につながっていると思う。中等教育の難しさ、良さは、型にはまって型に抜けるということが基本だろう。そのときに男子だけであることがプラスになる。教育は次の世代を担う生徒たちにぬくもりを伝えること。『生きている』から『生きていく』に変えていく、それが教育現場にいる者の使命だ」と話した。

 続いて「女子教育について」、〓※1友学園女子中学高等学校の吉野明校長が講演した。女子教育のキーワードは、「不安と自信のなさ、自己肯定感だ。女子を伸ばすためには、横の共感できる人間関係をつくっていくことだ」とした。

 また、今の学校制度について、戦前の男子校の制度を踏襲しているため、男子の成長段階に合わせたカリキュラムとなっており、女子の発達段階に合わないとした。

 吉野校長は、「子どもたちが女子校の中で自己肯定感を高めながら前向きに取り組むことで一人一人の能力を確実に伸ばしていく。そして、コミュニケーション、居場所、自己肯定感が女子の集団に生まれてくると、非常に強い集団ができると思う。これまでの縦を中心とする社会の大きな枠組みを飛ばして、横の関係、対等な人間関係をつくっていくために、女子教育は大きな役割を果たせるのではないか。女子校の中でも学び方を変えていけば、これから女性はうんと伸びていく」と話した。

 ◇

 パネルディスカッションでは、阿部義広・浅野中学高校長、錦昭江・鎌倉女学院中学高校長、滝口佳津江・田園調布雙葉中学高校長に、基調講演を行った工藤校長と吉野校長が加わってパネリストを務めた。コーディネーターは實吉幹夫・東京女子学園中学高校長。

 この中で阿部校長は、「本校の校訓は不屈の精神。そのため入学してくる生徒には、男子としての強さ、たくましさを暗黙に求めている。自分の考えを持って、世の中で伍(ご)してやっていける人物を育てたい。一人一人を見つめつつ、6年後にしっかりした考えを持てる男子を育てたいと考え、生徒にはある種の負荷をかける。生徒がその負荷を抱えて乗り越えてくる、これが本校の方針だ。この負荷を与えて6年間を過ごさせるのは、男子だけであることが条件だといえるだろう」と話した。

 錦校長は「発達段階では男女差があると思う。女子の特性はこつこつ真面目で堅実だ。繰り返し丁寧にやる作業は女子に向いていると思う。女子校は、女子の発達段階に応じた指導ができるという利点がある。

 生徒たちは、女子だからできないという意識がない。力仕事でも何でもやる。だから、努力すれば夢はかなうと思って巣立っていく。それが女子校の良さだと思う。女子校パワーが出せること、将来にわたって肯定感が持てることが女子校の利点ではないか。もう一つは、生涯にわたって付き合える友達を探し出せるのが良い点だろう」と話した。

 滝口校長は「女子校は、女子だけなので素の自分を出せる。共感性を分かち合えるし、安心感のようなものがある。思春期には体の変化も大きく、異性の前では恥をかきたくないという気持ちもある。特にアイデンティティーを確立する時期に、ありのままの自分を伸び伸びと表現できる、男女別学にはそういう良さがあるのではないか。リーダーシップなども、女子校で育つと思う。女子は言葉の表現力が豊かで、深い表現ができる。また言葉の共感力や丁寧さがある。こまやかな心遣いも女子校ならではだろう」と話した。

 工藤校長は「男子校は縦のつながりで、その縦の関係は生涯変わらない。子どもたちの選択肢として、男子校、女子校が生き生きとしていくことが大事だ。教育を選択できることが素晴らしい」と述べた。

 吉野校長は「興味・関心という意味では、最近は、もっと違う意見があるのではないかと、異質な相手を求めて、幅広く付き合ってみたいという気持ちはあるようだ」と話した。

 コメントを求められた中井代表は「男女は、脳の違いから、感じ方、興味・関心などいろいろな違いがあるが、特性に応じて教育した場合に、男子校は男子の特性に合わせてより伸ばせるし、女子校は女子がより安心して自己肯定感を高めてより伸ばせると、私も実感している」と述べた。

 最後に清水哲雄・〓※1友学園女子中学高校理事が閉会のあいさつをして第4回シンポジウムを閉めくくった。
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