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記事2015年6月13日 2343号 (1面) 
都道府県ごとに目標設定、達成度公表
生徒の英語力向上推進プラン策定 文部科学省
高3生調査で分かった 英語力低迷受けて 英語教育、更にてこ入れ
平成30年には中3全国調査

 下村博文・文部科学大臣は6月5日の記者会見で、同省として新たに「生徒の英語力向上推進プラン」を策定したと発表した。




 同省は平成25年12月に「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を策定、26年度から計画に沿い英語科教員の研修等の施策を展開、高校卒業段階で英検2級〜準1級、TOEFL iBT57点程度以上を目標に定めた。しかし26年7月〜9月、国公立高校3年生を対象に実施した大規模な英語フィージビリティ(実現可能性)調査で、高校生の英語力は、聞く・読む・書く・話す、の4技能とも英検3〜5級程度の中学生レベルで、英語嫌いの生徒も6割近くに上るなどさまざまな課題が判明した。

 そのため同計画に掲げた生徒の着実な英語力の向上を図るため、新たなプランを策定したもので、同プランでは、各都道府県に国の目標を踏まえた目標設定、毎年の達成状況公表を要請、中・高校生の英語力向上に向けて都道府県における英語教育改善のPDCAサイクル構築を求めたもの。同プランに私立学校に言及した点はなく、私学校は公立学校とは異なる扱いとなる見通し。

 政府の第2期教育振興基本計画(平成25〜29年)では、中学校卒業段階で英検3級程度以上の生徒が50%、高校卒業段階で英検準2級〜2級程度以上が50%に達するとの目標を設定している。

 昨年夏のフィージビリティ調査結果は、5年計画の内、約1年と数か月が過ぎた段階だったが、毎年、実施してきた英語教育実施状況調査結果でも十分な改善が見られないことから、今回の「プラン」策定となった。

 同プランでは、まずゴールを東京オリンピック開催年、平成32(2020)年と定め、第2期教育振興基本計画最終年度、平成29年度までの都道府県ごとの目標設定・公表を、27年度末を目途に実施するよう要請。また、平成28年度からは、同省の「英語教育実施状況調査」に基づく都道府県別の生徒の英語力の結果を公表する、としている。

 平成26年度時点で教育振興基本計画に掲げた目標を達成していた中学校卒業者は全体の35%(うち取得者16・5%、取得者相当15・7%)、高校卒業者では32%(うち取得者11・1%、取得者相当20・8%)という状況だ。それを29年度にはそれぞれ50%に引き上げ、第3期教育振興基本計画(平成30―34年度)中には、その目標を60%に、第4期(平成35―39年度)計画2年目の平成36年度には目標を70%に引き上げる方針だ。

 このほか、中学生については、新たに国が英語4技能を測定する「全国的な学力調査」を平成31年度から実施して英語力の把握に努めることも同プランに盛り込まれている。同調査は数年に一度程度の実施を検討する。

 また平成27年度と28年度には6万人の中3生を対象にフィージビリティ調査を行う方針。

 高校3年生については、昨年夏に行った大規模な(7万人対象)英語のフィージビリティ調査を平成27年度にも実施することにしている。27年度の高3生は現行学習指導要領で学んだ生徒のため、昨年の調査(旧学習指導要領で学んだ高3生が対象)との経年比較を行うことにしている。

 平成31年度に中3生を対象に実施する全国的な学力調査については、話す能力をどのような方法で測るかが大きな課題となる見通し。平成26年度に高3生7万人を対象に行ったフィージビリティ調査の際も話す能力の調査だけは1・7万人(調査対象約480校)の一校当たり1クラス)にとどまっている。同調査について下村大臣は6月5日の記者会見の中で、現在、国語、数学を中心に実施している全国学力・学習状況調査と同様に、全ての学校における生徒への教育指導改善・充実に役立てるため悉皆で実施、生徒個人の成績は公表しないが、生徒が自らの課題が何かを理解し、学習の改善に役立てるものとの目的に沿って、調査の制度設計を行っていく考えを明らかにしている。



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