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記事2015年5月23日 2341号 (1面) 
教育再生実行会議が第7次提言
アクティブ・ラーニングに授業革新
教師育成指標の策定など提言

 安倍晋三総理が開催する政府の「教育再生実行会議」(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)が5月14日、「これからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教育、教師の在り方について」と題する第7次提言を取りまとめ、安倍総理に提出した。

 第2次安倍内閣の誕生とともに、平成25年1月に審議を開始した同会議は、およそ2年半の間にすでに「いじめ問題」や「教育委員会制度改革」、「高大接続改革・大学入試改革」、「学制改革」など六つの提言をまとめており、今回は七つ目の提言。

 今後、コンピューターの性能が飛躍的に伸び、2045年にはコンピューターの能力が人間の能力を上回る技術的転換点が訪れるという予測や、グローバル化の波が国内にいても一人一人に押し寄せるという時代背景の中で、求められる人材像を示し、それを教育でどう育成するか、教育の革新を実践できる教員をどう育成するかなどについて提言したもの。

 第7次提言自体はA4判で15ページと簡潔な内容が特徴で、具体策な施策については、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会(会長=北山禎介・三井住友銀行取締役会長)で検討が進められる予定。

 第7次提言は大きく分けて、(1)これからの時代を生きる人たちに必要とされる資質・能力〜求められる人材像〜、(2)これからの時代を見据えた教育内容・方法の革新〜求められる資質・能力を教育によっていかに培うか〜、(3)教師に優れた人材が集まる改革〜教育の革新を実践できる人材に教壇に立ってもらうために〜、の3部構成。

 このうち今後求められる人材像については、主体的に課題(=理想とする状態と現実との差)を発見し、解決に導く力、志、リーダーシップ、また創造性、チャレンジ精神、忍耐力、自己肯定感、さらに感性、思いやり、コミュニケーション能力、多様性を受容する力―を持った人物としており、そのほか異能・異才の人材を発掘し、その才能を社会に変革をもたらす可能性があるものとして伸ばすことも重要だと指摘している。

 こうした資質・能力については、小学校から大学に至るまで課題解決に向けた主体的・協働的・能動的学び(アクティブ・ラーニング)へと授業を革新すること、国は教材開発等を積極的に支援、教育現場で創意に富んだ多様な教育活動が行われるよう学校現場に自由度を与えることも重要としている。

 またICT活用による学びの環境の革新(学校外の教育資源の活用、教材のデジタル化等)と情報活用能力の育成(プログラミングや情報セキュリティーの学習活動の充実等)、新たな価値を生み出す創造性、起業家精神の育成、特に優れた才能を有する人材の発掘・育成―の重要性を挙げている。

 こうした教育革新を可能とするには、教師の養成・採用・研修の改革が喫緊の課題としており、教師がキャリアステージに応じて標準的に修得することが求められる能力の明確化を図る育成指標を策定すること、研修の機会については私立学校にも十分提供されるよう配慮すること、教師は授業等の教育活動に専念できる環境を整備することが重要で、課外活動に係る教師の負担軽減では私立学校も対象とするよう配慮すること、教師のほか、事務職員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、部活動指導員、学校司書、ICT支援員等による「チーム学校」の実現を提言している。

 その他、学校現場で行う実習等を通じて適性を厳格に評価する教師インターン制度(仮称)の検討や、優れた指導力のある教師が若手教員に助言・支援を行うための教職員体制(メンター制度)の整備を求めているが、提言内容の実現にはかなりの財源が必要となり、財源の確保をどう実現するかが大きな課題といえる。



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