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記事2015年4月23日 2338号 (1面) 
実践的な職業教育行う新高等教育機関制度設計へ
下村文部科学大臣が中教審に諮問
総会直属特別部会で集中審議 学校と地域の連携・協働推進策も検討

 文部科学省の中央教育審議会(会長=北山禎介・三井住友銀行取締役会長)は4月14日、同省内で第99回総会を開催した。この席で下村博文文科大臣は中教審に対して、「個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について」と「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について」の2点について諮問した。答申の時期について下村大臣は、「可能な限り速やかに」と要請した。




 この日、大臣が諮問した前者は、わが国が抱えるさまざまな課題の解決に全員参加で取り組んでいくため、その前提条件として個人の能力・可能性の開花、教育の多様化・質保証のための施策の検討を求めたもの。

 諮問内容の柱は、@社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い職業人の育成とA生涯を通じた学びによる可能性の拡大、自己実現および社会貢献・地域課題解決に向けた環境整備。

 このうち@は、今年3月27日、文科省の有識者会議が基本的な方向性に関する審議報告をまとめた「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の制度設計を求めたもの。現在の大学の制度や体系との関係を踏まえ、高等教育機関として教育の質の確保策、学修成果が国際的・国内的に適切に評価される制度、専門高校生を含む高校生の進路の選択肢となる制度、社会人が学び直ししやすい仕組みなどを検討する。

 これら課題検討のため総会直属の機関として、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会」を新設することが提案され、了承された。委員の人選は北山会長に一任された。前者の諮問については生涯学習分科会でも審議する。Aは、e‐ラーニングの発展に対応した、各種教育プログラム、検定試験の信頼性や質を保証する仕組みづくり、そうした試験結果等を進学や就職等に活用できる方策、民間事業者や大学等における各種教育プログラム等の学習履歴を安全に管理、活用する仕組みづくり、自己実現および社会貢献・地域課題解決に向けた環境整備を検討する。

 一方、諮問の後者は、少子高齢化で地域コミュニティの存続が危ぶまれる中で、学校に地域コミュニティの核としての役割を求めるもので、全ての学校のコミュニティ・スクール化に向けて、総合的な方策の検討、校長のリーダーシップの観点、学校支援や学校評価等の関連の仕組みとの一体的な推進の観点、機能の在り方、幼稚園や高校、特別支援学校におけるコミュニティ・スクールの在り方を検討する。また、地域の教育資源を効果的に結び付ける学校支援地域本部等の仕組みの在り方、学校と地域をつなぐコディネーター等の人材配置の在り方や、養成・研修・確保方策等、地方創生の実現に向け、学校と地域との連携・協働による教育活動を通じた人的育成ネットワークの構築などを検討する。後者の諮問については、生涯学習分科会と初等中等教育分科会で審議する。

 二つの諮問に関しては委員からさまざまな意見が出されたが、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関に関しては、私学助成を実施すると、私立大学等への経常経費に対する助成率(平成25年度で10・3%)のさらなる低下が懸念されるため、新たな助成財源確保の必要性を指摘する意見、従来の私学助成の中で賄えとする意見などが聞かれた。このほか総会では第2期教育振興基本計画(平成25―29年度)のフォローアップと第3期計画(平成30―34年度)の検討のため教育振興基本計画部会を設置することが了承された。委員の人選は会長が行うが、中教審の会長、副会長、各分科会の会長、副分科会長で構成する予定。



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