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記事2015年3月3日 2333号 (2面) 
短期大学振興議員連盟が総会
実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関制度化を懸念
質の低い高等教育作る危惧指摘

 短期大学振興議員連盟(会長=小坂憲次・参議院議員)は2月26日、衆議院第2議員会館内で総会を開き、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化」について、文部科学省の吉田大輔・高等教育局長と河村潤子・生涯学習政策局長から、現在、制度設計議論を進めている同省有識者会議での議論の進捗状況や同省の意向等を聴取した。総会には与党・自由民主党の30人近い国会議員(本人)、日本私立短期大学協会の関口修会長をはじめ短大関係者約100人が出席した。

 野田聖子・同議連幹事長に続いてあいさつした小坂会長は、「地域で短大の役割は非常に重要。地域の皆さんに支えられながら、地域の人材をしっかり育成することが、これからの日本の成長戦略だ。今日は文部科学省にも来てもらい、教育を取り巻く環境についていろいろ意見交換をしてもらいたい」と語った。

 その後、文部科学省の吉田局長が、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」の審議状況や論点等を説明。実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化は教育再生実行会議の第5次提言に盛り込まれたもので、実践的な職業を行うには大学や短大では一定の限界があり、専門学校については、必ずしも適切な社会的評価を得られていないなどから新高等教育機関創設が提言されたもので、学士、短期大学士相当の学位を授与、公的助成については設置基準にふさわしい助成水準を検討、追加的財政需要に見合った財源確保が必要といった審議状況を説明した。

 その上で日短協の関口会長は、大学団体と足並みを揃えての要望を説明、「職業教育については大学、短期大学が行ってきたこれまでの実績を踏まえて検討することが適当であり、基本的に教育環境をどうするかということがなければ、良いシステムを作っても機能しない。特に図書館についてはきちんとした整備が必要で、教養教育がなければ十分な学習成果は得られないと危惧している」などと語った。

 また、同協会の滝川嘉彦副会長は、「文部科学省の高等教育の質を高めるという動きとは逆行する質の低い高等教育を作っていく方向性に向かっていく危惧を感じている」と、また佐久間勝彦副会長は、「(実践的な職業育を行う高等教育機関の)設置基準を低いところで決めて、日本国内で大学としても、世界から見るとなんで大学なのかということにならないか懸念している」と語った。

 議員からは次々に意見が出されたが、渡海紀三朗・相談役(衆議院議員、元文部科学大臣)は、「(実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化については)もう少し原点に戻った議論をしてもらわないと。質の高い職業人を育成するため、大学はこう変わりなさい、短大ならばこういう工夫も必要だというやり方なら良いが、新たな高等教育機関を制度化することが初めから目的化している。その所をちゃんと整理しないと、どっかが入りたがっているから議論しているとしか見えない」と語り、小坂会長も「実践的な職業教育の必要性に誰も異論を挟まないが、短期大学、大学は実践的な職業教育を行ってきた。なぜ新たな学校種なのか全く見えない。また地域創生の観点からもこの問題にメスを入れたい」と語った。
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