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記事2015年3月23日 2235号 (1面) 
職業実践教育プログラム制度創設へ
大学等が社会人の学び直し支援
文科相認定へ検討会発足

 安倍総理が開催する教育再生実行会議は3月4日の第6次提言「学び続ける社会、全員参加型社会、地方創生を実現する教育の在り方について」の中で、高校や大学等の卒業までに学んだことで生涯通用する時代は既に過去のものとなったとして、社会に出た後も誰もが学び続け、夢と志のために挑戦できる社会の実現等の必要性を指摘したが、それを踏まえ文部科学省は社会人の学び直しに資する実践的・専門的な教育プログラムの在り方等を考える検討会を立ち上げ、その初会合を3月19日、省内で開いた。文科相認定の「職業実践教育プログラム(仮称)」制度を創設する。




 同省の調べによると、大学院や大学、短大、専修学校等で学び直しをしている社会人は現在、11万1千人を数える。社会人特別入学者選抜、夜間・昼夜開講制、科目等履修生制度、通信制、履修証明制度、サテライト教室、大学公開講座等の仕組みがあり、平成19―24年を見ると、社会人を対象にした学位取得を目的としたコースを設置している大学院は増加傾向にある。また職業能力開発総合大学校能力開発研究センターの調べ(平成17年)では、社会人の89%が再教育に「受けたい」、「興味がある」と回答。再教育で利用したい教育機関として46・4%の人が大学院を、19・5%の人が大学を挙げている。しかし東京大学の調べによると社会人が大学院進学の主な障害として上位に挙げているのは、「費用が高すぎる」「勤務時間が長すぎて十分な時間がない」「職場の理解が得られない」などで、また早稲田大学の調べでは社会人学生はカリキュラム内容で「最先端にテーマを置いた内容」や「研究推進能力を身に付ける内容」を重視しているが、大学院は必ずしもそうしたテーマを重視していない。教育手法でも社会人の重視する「事例研究・ケーススタディ」「実務経験のある教員・講師による指導」を大学院は重視してないなどが明らかになっている。

 こうした状況の中で、検討会では、「職業実践教育プログラム」の認定制度創設に向けて、@修了に必要な授業時数、単位数A社会人の学び直しに資する実践的・専門的な教育」とはどのような教育か(例えば実務家教員による授業、インターンシップ、課題解決型学修、企業と連携した授業など)B総授業時数に占める実践的・専門的な授業の割合C社会人が通いやすくするための方策(例えば週末開講、夜間開講、IT活用など)D産業界との協働E職業実践教育プログラムの質の担保策等を検討する。

 検討会の座長は荻上紘一・大妻女子大学長、座長代理は小杉礼子・独立行政法人労働政策研究・研修機構特任フェローで、そのほか企業の人事部長や大学教授ら、委員は全員で10人。実践的・専門的な学び直しプログラムについては、すでに専修学校で文部科学大臣が認定する職業実践専門課程制度がスタートしているため、今回の「職業実践教育プログラム」は大学院、大学、短期大学、高専を対象にしている。

 同検討会は、今後、3月31日に第2回会合を開き、関係者からヒアリングを行い、4月14日には認定の仕組みの方向性を議論、4月22日には議論のまとめを議題とする―とのスケジュールは決まっている。

 3月19日の第一回会合では、委員の岩立康也・肥後銀行人事部長が熊本大学と連携した行員向け教育プログラムの開発の経緯や内容等を報告したほか、大学等における社会人の実践的・専門的な学び直しプログラムの在り方について議論した。

 対象とする社会人とはどのような人か、同プログラムは肥後銀行と熊本大学の例のように、特定の企業を対象としたオーダーメイドの教育プログラムを対象とするのか、といった意見交換があったが、文部科学省では現に就業している人や今後働こうと考えている主婦などの社会人を対象にしたプログラムで、特定の企業を想定したオーダーメイドのプログラムは対象としない、した。

 またプログラムの対象者として非正規労働者への目配りを求める意見や労働市場を見込んだ内容とすることを求める意見、プログラムの対象者については大学等の裁量に任せ、大学が社会人の学び直しプログラムに取り組もうと思わせるインセンティブが必要との意見も聞かれた。
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