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記事2015年3月13日 2334号 (2面) 
新高等教育機関の制度化会議
審議まとめ素案基に議論
研究の範囲や質で活発な意見

 文部科学省の「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」(座長=黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長)は3月4日、同省内で第11回会議を開いた。前回までの議論を踏まえた「審議まとめ素案」が形となり、その内容を元にさらなる議論を重ねた。

 素案はまず「高等教育の多様化の必要性」を挙げる。産業構造や社会の急速な変化に対応した専門職業人の養成には、既存の学校種では限界がある、としている。大学は教育以外に学術研究を担うこと、短期大学は修業年限の短さ、専門学校は教育の質保証の問題、高専は高校卒業者を受け入れにくいことを、それぞれの限界に挙げている。こうした現状から、新しい高等教育機関の制度化が必要としている。

 学校種は、新高等教育機関は「大学体系の中に位置付ける」ことを基本的な方向性とした。既存の学校種を設置したまま、一部の学部・学科を新高等教育機関として併設するケースも考慮している。ただし、今後の審議においても「大学とは異なる新たな学校種を設ける可能性を排除せずに審議することが必要」とも添えている。

 制度化に当たっての主要な論点は、「目的(教育・研究)」「教育内容・方法」「修業年限」「学位・称号」等の8項目に分けて整理された。目的は「教育」を主とし、「研究」は並置でないことを既存の大学との違いとする。ただしその上で、各職業分野の企業との共同制作等の研究活動は奨励されるべき、としている。これについて「奨励とはどの程度か。言葉が一人歩きして研究重視にならないか」「研究しない大学はあり得ない。既存の大学と違うのは研究の質と目的だ。それを示す文言は必要」と、研究の範囲や質の示し方を巡って活発に意見が交わされた。

 教育方法は、実習・実技・演習・実験等を重視し、PBL等の実践的な方法を制度化すべき、としている。修業年限は2〜4年で、社会人の学び直しへの対応として、2〜3年制の前期課程と1〜2年制の後期課程の2段階編成とすることや、2〜3カ月単位の短期履修を積み上げていく編成等も想定している。卒業に必要な単位は既存の大学・短大等と同水準が適当、としている。

 これら論点は、大学体系に位置付けることを前提とし、学位授与機関としての国際的互換性や、国内の既存の大学等の水準を踏まえたものとなっている。これに対してある委員から「大学体系だが学位は与えない、との選択肢もあるのでは」との意見が出たが、座長および事務局は「学位授与は大学か非大学かの線引きに関わる部分だ」「大学だが学位授与機関でない、というのは国際性の面で難しい」と退けた。
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