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記事2015年12月13日 2360号 (1面) 
地方をけん引するのは私大
私大団体連 地方創生に向けた私大の役割で中間報告
私大が取り組む具体的展開策を提示
政府には私大が基幹の構造的大転換要望

 日本私立大学団体連合会の高等教育改革委員会(委員長=黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長)・地方活性化(地域創生)問題に関する小委員会(主査=佐藤東洋士・桜美林大学理事長・総長)は、このほど、「地方創生に向けた私立大学の役割―わが国の永続的発展のために―」と題する中間報告を公表した。私立大学が取り組む具体的展開策や政府に対する具体的提言等をまとめたもの。




 中間報告は、「総論」、「T.地方創生における私立大学の役割」、「U.私立大学が取り組む具体的展開策」、「V.地方創生に向けた政府に対する具体的提言」、「資料集」で構成されている。

 このうち総論では、今後、50年にわたる大幅な人口減少社会の到来が予想されている中で、資源の乏しいわが国が将来にわたり永続的な発展を実現するためには、人材の育成、教育が最も重要で、高等教育による不断の人材育成がその成否のカギを握っていると指摘。

 その中でも学部学生の約8割が学ぶ私立大学は大学数でも約8割を占め、そのうちの約6割が地方に立地していることから、地域をけん引するリーダー、中間層の育成は私立大学が果たしている重い役割と公的責任の中でも重要なものになっているとし、そのため私立大学は地方自治体との連携を中心としながら地域内の大学間連携や地域経済界との連携、学生間交流などを通して地方創生・再生・活性化、ひいてはわが国の再生・発展のため可能な限り取り組みを推進していく、との決意を述べている。また、T.地方創生における私立大学の役割では、私立大学が実践している教育研究活動は各地域を支える高等教育機関としても多様で、そこで育成される人材の多様性は、私立大学の社会的役割を示すものとして極めて重要。また大都市圏と地方の人材循環に関しては、地方出身者の地元への還流のみならず、大都市圏出身者の地方への就職など若手人材の地方への移動を積極的に促進していくとしている。

 こうした考えを踏まえて、大都市に所在する大学を含めて大学と地方自治体や地方経済会との広域・体系的な連携を推進、地方でのインターンシップや実習、フィールドワークの機会を組織的に展開、大学のシンクタンク的役割を強化、地方活性化のための規制緩和に当たっては、学生の地域における実習活動の促進が一層強められるよう働き掛けを行い、そのほか社会人の学び直し環境の整備・充実、組織的・体系的なネットワークを拡大、大学が所在しない地域との連携・協力、地域を支える人材の育成に向けた教育環境の整備を実施する、としている。

 こうした考え方や具体的施策等に沿って、政府には四つの提言を行っている。提言1は私学助成における地方・中小規模大学を重視した施策の推進(私立大学等経常費補助金の補助率2分の1の実現、私学助成配分基準の撤廃、私学助成における「社会貢献係数(仮称)」の導入)。提言2は地方の若者への財政的支援(教育寮整備等への支援、新たな就学支援金制度創設及び教育に係る経費への公正な支援)。提言3では、生涯学習社会の早期実現を、提言4では、高等教育のグランドデザインの構築を求めている。この中では多様な価値追求で地域をけん引するリーダー、中間層を育成する私立大学を高等教育の基幹に据える「高等教育の構造的大転換」の実現を求めている。同連合会は今年度内を目途に最終報告をまとめる予定。



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