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記事2015年11月3日 2356号 (1面) 
財政審に反論、緊急提言まとめる
中教審が総会で、馳大臣に提出
小中学校定数、国立大交付金の削減に 中教審として強い危機感表明

 中央教育審議会(会長=北山禎介・三井住友銀行取締役会長)は10月28日、文部科学省内で第102回総会を開いた。財務省の財政制度等審議会が26日に公表した、小中学校教職員の大幅な定数削減、国立大学の運営費交付金削減といった案を「暴論」とし、反論となる内容の2つの緊急提言をまとめた。総会には馳浩・文部科学大臣が初めて出席しており、提言はその場で北山会長から馳大臣に手渡された。




 財政審は今後の児童・生徒数の減少により、現行の1学級あたり平均1・8人の配置割合を維持した場合、現在69・4万人の教職員を平成36年度までに3万7千人減らせる、としている。中教審はこれを「各学校の厳しい実態を無視」「あまりにも非現実的」と批判。教育格差の拡大、特別な指導を必要とする児童・生徒や外国人児童・生徒の増加、いじめ・不登校・暴力行為の増加といった課題への対応や、主体的な学習・指導への改革が必要とされていることなどを挙げて、「教職員定数の機械的な削減ではなく、多様な教育課題や地域のニーズに応じた確固たる教育活動を行うために必要な教職員定数を戦略的に充実・確保するべきである」と提言した。

 国立大学法人運営費交付金に関しては、財務省は今後15年間、毎年度1%減少させて平成43年度までに1600億円減を図るとしている。一方、大学には寄附金の獲得や産学連携等の推進等で自己収入を毎年1・6%ずつ増加させる、とする。これに対して中教審は、過去12年間で既に約12%削減され、若手の育成などの教育研究基盤に深刻な影響が出ていること、自己収入の増加は大学の安定的な経営に支障をきたす恐れがあること等を挙げて「運営費交付金の機械的な削減ではなく、自己変革を進める大学を積極的に支援し、教育研究及び社会貢献機能の強化を図るために、国立大学法人運営費交付金等を充実・確保すべきである」と提言した。

 異例といえる緊急提言を行ったことについて、北山会長は「ここで中教審としての考え方をはっきり示す必要があった」と述べた。また、初等中等教育分科会長も務める小川正人副会長は「次期学習指導要領の改訂作業を進めているが、新しい学校教育の構築と教職員定数の確保は不可分だ。財務省の案は大変な障害になる」と述べた。河田悌一副会長は「日本が高等教育にかける資金は今もOECDで最低レベル。中国は日本の3倍近い。資源の無い日本が教育に資本を投じなかったら国際的地位は低下する」などと指摘した。

 総会では他に、教員養成部会がまとめた答申素案「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」と、生涯学習分科会学校地域協働部会と初等中等教育分科会の作業部会による審議まとめ「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」が議題となった。



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