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記事2014年7月3日 2311号 (3面) 
経常費補助は基幹的補助 更なる拡充を
成立から39年迎えた私学振興助成法
私学の躍進に大きく貢献 補助率は今なお低迷

 国による私学助成制度の根拠となっている「私立学校振興助成法」は様々な困難の末、昭和50年7月に国会で成立した。当時、自由民主党の複数の若手議員により提出された法案だった。同法は今年、成立から39年を迎えた。

 過去例のない私学振興助成法案は、将来の財政負担を嫌う財政当局の強い抵抗に遭い、「大骨小骨を抜かれた」と揶揄されるまでに後退を余儀なくされたものの、私学関係者の強い期待もあって、「私学振興助成についての国の基本的姿勢と財政援助の基本的方向性を明らかにしたものであり、私立学校が国の財政援助についての法的保障の下に、教育条件の維持向上などの努力ができるようになったという意味で私学振興史上画期的な措置といえるもの」(文部科学省)となった。

 私学助成は当初は驚くほどの伸びを見せたが、ここ十年程は低迷している。ごく最近では過去最高額を獲得といったこともあるが、常に国の厳しい財政状況に大きく影響されている。

 国の私学助成は大学等の場合、現在、総額約3200億円を超えたものの、経常経費に対する補助率はなお10%程度に過ぎず、高校等でも補助率は3割程度で、目標に掲げている経常経費の2分の1補助実現の道のりは遠い、ゴールが見えない状況だ。高等教育に対する公財政支出は、GDP(国内総生産)に占める比率が、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均を大きく下回る水準で、教育への投資の遅れが、現在の我が国経済の低迷の要因の一つともいわれている。

 国の私立高校等に対する経常費補助は平成26年度で1040億円。

 見方を変えれば、我が国の教育は私立学校に支えられている、私立学校は少ない公費で頑張っている、といえる。

 下村文部科学大臣は今年に入って様々な機会を捉えて教育投資の拡大や安定的な教育費財源の必要性を各方面に訴えている。経済学者等も加えた省内の勉強会でまとめた「2020年 教育再生を通じた日本再生の実現に向けて」を説明、教育投資は少子化の解消や国民間の格差の固定化を防ぐ効果や経済成長や雇用にも大きな効果を発揮することを訴えている。

 最終的には国民の理解をどう得られるかにかかっているが、決して平たんな道ではない。しかし今後、教育投資を増やすのであれば、私立学校への公的投資をふやすべきで、政府も国会もそうした認識を示しており、またわが国の今後の発展には多様性の確保、地方の振興が重要だとの方針が打ち出されている。

 高校生に対しては、今年度から国公私立とも高校等就学支援金制度に一本化され、県段階の上乗せ補助もあり、地域によっては教育費の負担が減少、私立高校生が増えている。しかし就学支援金は基本的に生徒・家庭への直接助成で、学校に対する機関補助ではない。勿論、直接助成も必要だが、私学振興助成法に基づく経常費補助のような機関補助で学校の教育や経営を支えてこそ、またその安定性・継続性の中で息の長い特色ある教育を展開できるのであって、多様な人材の輩出には多様な私立学校の存立が不可欠なのだ。また国公立大学との公費支出額の格差是正も重要である。現在のように私立学校が存在感を増したのは、およそ40年前に私学助成が実現し、私立学校が人的、物的環境を整えられたからである。国立、公立学校を含めて財政支援の極端なアンバランスを是正し、私学の振興、わが国の発展につなげていくべきではないか。



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