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記事2014年7月3日 2311号 (1面) 
中教審総会、大臣と意見交換
下村大臣 教育投資の見解説明 私立義務教育学校に言及も

 中央教育審議会(安西祐一郎会長=独立行政法人日本学術振興会理事長)は、6月30日、東京・千代田区の学士会館で第91回総会を開いた。

 この日の総会では、高大接続特別部会がこのほどまとめた答申案と初等中等教育分科会高等学校教育部会の審議のまとめ案がそれぞれ部会長から報告があり、検討を行ったほか、下村博文文部科学大臣が省内の勉強会等でまとめた教育投資や教育財源等に関する報告「2020年 教育再生を通じた日本再生の実現に向けて」を説明、その後、委員との間で意見交換を行った。

 このうち高大接続特別部会の答申案について安西祐一郎部会長は、「7月末を目標としていたが、もう少し時間をかけて議論して詰めて、できるだけ早く答申を出したい」と語った。また高校教育部会の審議のまとめに関して小川正人部会長は、「今年3月の報告書をほぼ踏襲した内容だが、職業教育、特に高校専門学科の特色などについて追記するなど記述を厚めにしたこと、達成度テスト基礎レベルと既存の高認試験との統合については慎重な意見を頂いたことなどを加えたことが、3月以降の修正点だと説明した。これら報告に関しては委員から平成33年度から導入するようだが、その年で本当に(従来の制度と)切り分けができるのかを尋ねる意見出され、安西部会長は今後ステップをざっくりとした形でもなるべく早く提示する必要性や達成度テストのトライアルとしてプレテスト実施の可能性に言及した。また別の委員は「達成度テストの導入で、少なくとも国立大学は独自の学力検査を課さないようにすべきだ。大学側が入学者選抜改革の準備ができれば4年後くらいから達成度テストは始められる」「達成度テストは海外の生徒も利用できるようにしてほしい」といった意見が聞かれた。

 この後、下村大臣は、教育費の負担軽減が子育てに対する不安を軽減させ、出生率の上昇に結びつくこと、親の年収が子どもの大学進学率との間に相関関係が見られる中で、教育投資は格差の固定化を防ぐ効果があり、また経済成長・雇用の確保、将来の公的支出抑制にも効果があることなどを説明した。また教育へ民間資金を呼び込むことやオーストラリアで見られるような所得連動返還型奨学金の重要性などを強調した。必要な改革には4〜5兆円が必要で、文部科学省の予算額に匹敵するような財源の確保は極めて大変なこと。安定的な財源確保の方策を含めてさらに検討を進め、国民に説得力あるようにしていきたいとも語った。

 こうした下村大臣の意向に委員からは、高学歴の女子の高い離婚率への対応や東京一極集中の改善、卒業生からの寄附を集める方策の必要性などが指摘された。また日本私立中学高等学校連合会長の吉田晋委員は、幼児期の教育費負担軽減が考えられている中で、義務教育段階の私立小学校、私立中学校生への支援について大臣の考えを伺いたいと質問した。これに対して下村大臣は、「今までの機関補助とバウチャー的な一人一人の子どもに立った補助のバランスを考えながら、私学に通っている子どもであっても十分(教育費の負担軽減に)配慮したい」と語った。現職の大臣が私立義務教育学校の負担軽減に言及するのは極めて稀で、今後の教育費負担軽減に期待をつなぐ発言となった。
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