日本私立短期大学協会の入試広報委員会(委員長=福井一光・鎌倉女子大学短期大学部理事長・学長)は、「育て、育てられる募集広報」をテーマに、平成26年度私立短大入試広報担当者研修会を7月2〜4日の3日間、浜松市のオークラアクトシティホテル浜松で開催。初日は、全体会として講演・ワークショップ、分科会が、2日目は事例報告・問題提起、分科会が、3日目は各分科会発表が行われた。初日の全体会の概要を紹介する。
初日、福井委員長は開会あいさつを兼ねた小講演を行った。その中で、広報活動について、「最大の広報活動はその大学が行う教育活動だ。質の高い教育の提供をその大学の教職員全員が連携しながら、どこまでできるかが、最も大切な要諦だ。
広報は、口コミこそが最も説得力ある広報活動になる。口コミは、直接的なコミュニケーションだけでなく、ネット媒体によって増幅されていくことも忘れてはならない。
文章にしても、その大学の入試広報担当者が日々の実践活動の中からつかみ取った実感のある言葉の方がリアリティーがある。大事なことは自分で自分の言葉を持つことだ」と話した。
さらに、今日の短期大学の抱える問題についても、『短期大学教育第70号』(日本私立短期大学協会刊)に掲載した座談会「短期大学の役割と機能」(以下、座談会)の内容を紹介しながら次のように話した。
「例えば、過去に統計で、平成23年には短期大学進学者はゼロになるといわれた。しかし現在、そうはなっていない。指数計算には、私たちの意思も工夫も状況の変化も入っていない。
座談会の中で、東京大学の小林雅之教授が、短期大学は質保証がきちんとできている、ニーズがあることも間違いない、世界を見ても全て四年制大学になることは考えにくい、そういう意味で短期高等教育機関は残る、と言われている。
甘い見通しを語りたいわけではない。しかし、こうした厳しいときこそ、力量が試される。逆に言えば、担当者の腕の見せどころだ。
中教審の第7期大学教育分科会において、短期大学の機能の充実という項目が設けられ、その振興策の検討が必要としている。つまり短期大学の役割や機能に国も大きな期待を寄せているということだ。
日本の高校卒業者の高等教育機関への進学率は約70%だ。他の高等教育機関の進学者の何割かを短期大学に連れてくることができれば、短期大学は変わってくる。また、短期大学で勉強したいという社会人のニーズを掘り起こすだけで、ずいぶん変わると思う。
とすると、四年制大学も専修学校もできない短期大学固有の仕方を考えてみることが非常に大事になってくる。
中でも短期大学に期待される固有の教育力が大事だ。学校教育法第108条には短期大学について、各専門の学芸を教育研究し、職業または実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とするとある。社会で信頼される仕事を進めていく上で力となるのは基礎部分、すなわち人間的な厚み、広い教養、判断力といったものだと思う。
しかも短期大学は第三者評価が制度化され、こうした力を育成する力が担保されている。
また短期大学は、職業または実際生活に必要な能力を育成することでは指導が行き届いている。
座談会の中で、筑波大学の清水一彦副学長が、大学の重要課題として、市民的な生活準備、プレパレーション・フォー・ライフを言われていた。これはとても大事な視点だ。大学は、一方に高度の知識・技能の伝達が、他方に良き市民を養成するという極めて大事な役割がある。市民としての基本的なこと、広い意味での徳性の涵(かん)養(よう)は短期大学の方が具体的実践的にできる。短期大学の教育の在り方に、私たちは自信を持っていい。高等学校のキャリア教育は、どこに何名進学させるかという問題から、生徒の将来を見据えての継続した学びを考える進路指導へと質的変化が見られる。これに関しては、座談会の中で、アメリカの例(1990年、テック・プレップ法)、中間技術者を養成する2プラス2と呼ばれるプログラムについて語られた。日本においても、高大連携をもう一歩進め、高校後半2年間と短大教育の2年間を活用して、保育・教育・看護系など高校生の関心事の絞り込みと将来の職業をイメージさせながら、キャリア教育を行っていくという方法が一つあるのではないか。あるいは、短大2年と四大2年でもっと具体的な免許・資格に直結させたキャリア教育ができるのではないか」と話した。
続いて、株式会社ラーニングバリュー常務取締役の川崎弘也氏を講師に、基調講演・ワークショップ「コミュニケーションを身につけるために」が行われた。
川崎氏は、今回は「聞く」コミュニケーションに絞り、チーム力を高めることを狙いとしたいとした。最初に、参加者にチェックリスト紙「あなたの学習スタイル」が配布され、自分の学習スタイルについてチェックする作業が行われた。その際、川崎氏は、「このチェックリストは参加者の学習能力を評価するものではない。正解もない。書かれた言葉は等しく良い特徴を表している。あなたの学習スタイルを求め表すものだ」と説明した。
書き終わると、チェックシートを基にレーダーチャートを作成。それを参加者同士が見せ合った。
レーダーチャートについて川崎氏は、「バランスの良い形が理想だと思われがちだが、このチェックリストでは絶対にそうはならない。チャートはその人の傾向を表している」と説明し、チームで活動する場合、いろいろな人がいることでいろいろな角度から見ることができると話した。
続いてグループ内で、インタビューし合う「体当たりインタビュー」が行われた。狙いは、お互いをより深く知り合うこと、チーム力を作るときの目標や狙いの共有化は図ること、コミュニケーションにおける聞くことの探求である。インタビュー後は、気持ちよく話せた相手や理由について振り返り、その後、話しやすさに関する学びの分かち合いとして、グループごとに話しやすかったケース・理由について意見発表が行われた。
最後に川崎氏が、話しやすいポイントは「相づちを打つ、批判しない、同調する、共感するなどだ」と話し、「こうしたことは保護者・学生の話を聞くときに生かせるだろう」と締めくくった。