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記事2014年5月3日 2306号 (1面) 
法科大学院と予備試験の関係整理へ
中教審法科大学院特別委員会開催
当初の趣旨とかけ離れた状況に
在学生の予備試験受験是非など検討




 司法試験という点≠フみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセス≠ニしての法曹養成制度の一環で平成16年度に創設された法科大学院の志願者や入学者がこの10年、大きく減少、その一方で経済的事由等から法科大学院を経由しないルートして設けられた司法試験予備試験の受験者が急増するなど法曹養成制度が大きく揺らいでいる。

 そうしたことから、文部科学省の中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(座長=井上正仁・早稲田大学大学院法務研究科教授)は5月8日、同省内で会合を開き、同省から法科大学院や予備試験の最新の動向等について説明を受けるとともに、法科大学院教育と司法試験予備試験との関係等について議論した。同特別委は今年3月31日にまとめた論点整理「今後検討すべき法科大学院教育の改善・充実に向けた基本的な方向性」の中で予備試験の法科大学院教育や法曹養成プロセス全体に与える影響等を把握、分析、政府全体の取り組みに反映していく方針を示していた。

 文科省の報告によると、平成16年度に国公私立を合わせて7万2800人いた法科大学院の志願者数は、26年度には約6分の1の1万1450人となり、入学者数もこの10年で、16年度の約40%に減少している。

 一方、予備試験の受験者数は平成23年度に6477人、24年度に7183人、25年度に9224人と急増。急増の要因は、大学や法科大学院の在学中の学生の受験の増加。25年度の状況を見ると、予備試験受験者の43・0%が大学あるいは法科大学院在学者で、予備試験合格者の77・2%が学部在学生あるいは法科大学院在学生で占められていた。しかも学部在学中に予備試験に合格した者の83%が東京大学、中央大学など5大学で占められていた。

 学生は、「司法試験への受験資格を得られれば、時間的・経済的負担をかけてまで法科大学院修了を目指す理由がない」などと語っており、現在の状況がプロセスとしての法曹養成の趣旨と大きくかけ離れた状況となっている。そのため特別委では今後、プロセスとしての法曹養成における予備試験の位置付けや、大学の学部や法科大学院在学中に予備試験を受験する是非、法科大学院のカリキュウラムと予備試験の科目の範囲、出題方法等の関係を検討するほか、飛び入学等を活用して法科大学院の教育期間短縮や法科大学院における司法試験に関連する指導方法等の具体的な取り扱い、客観的かつ厳格に進級判定する仕組みとして共通到達度確認試験(仮称)の実現、認証評価の抜本的改善を議論していく。この日、特別委員会の委員からは予備試験に関して、「当初の考えから逸脱」「年齢制限や試験問題増加が必要」「法科大学院のカリキュラムとパラレルの内容の試験とすべきだ」といった意見が聞かれた。



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