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記事2014年5月3日 2306号 (1面) 
教員の養成・採用・研修に関するWGが初会合
中央教育審議会 複数の学校種で指導のできる教員づくりへ
夏頃には複数の改革案

 小中一貫教育など多様な教育課程区分の設定や、小学校の教科担任制など多様な教育体制等に対応する教員免許制度などを検討するため、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会に新設された「教員の養成・採用・研修に関するワーキンググループ」(以下、WG)が5月2日、文部科学省内で初会合を開き、検討を開始した。委員は8人、主査には高岡信也・独立行政法人教員研修センター理事長が就任した。今後、月に1、2回の頻度で会議を重ね、夏頃を目途に数種類の改革案をまとめ、教員養成部会に報告する。文科省では同部会での審議を経て、教育職員免許法改正案を来年の通常国会に提出することにしている。




 文科省では、幼稚園と小学校、小学校と中学校、中学校と高校といった複数の学校種を通貫した教育や、小学校高学年での専科指導を全国的に進めるとともに、英語教育、道徳教育、特別支援教育、ICT活用、総合的な学習など、教員の個別具体的な教育課題への対応力を高めていく方針。

 安倍総理が開催する教育再生実行会議でも学校段階の区切りの再検討を進めていることから、文科省では、複数の学校種で指導できる教員や、専門性、実践性に優れた教員を養成していくことにしており、それに対応した教員免許状授与の所要資格を得させる教職課程の枠組みや内容を検討するもの。また、複数の学校種で指導できるような履修を実現するため、履修内容を圧縮(単位数を削減)する(※特に小・中学校の場合)方針で、そのため初任段階までを見据えて、養成段階ならびに現職段階で身に付けるべき事項を整理し、両者間の分担、連携を推し進めることにしている。

 加えて教職課程の質の向上のため、課程認定制度について再点検する。

 会議の中で、高岡主査は、「教員養成、任用、研修はぎりぎりの所まで来ているという認識ではないか。制度疲労を起こしているというのが個人的感想だ」と語った。

 またWGにオブザーバーとして参加する教員養成部会の小原芳明部会長(玉川大学長)は、「WGとして、A案、B案、C案、三つの案を出してほしい。教員を養成する大学は、単位の実質化が厳しく言われている。効率の良い教員養成を考え、124単位の枠の中で可能なことを考えてほしい。質の問題として共通性も必要」と語った。またオブザーバーの無藤隆・教員養成部会長代理(白梅学園大学教授)は、「小中一貫教育の可能性がかなり出てくる。免許状もやりやすくする必要がある。それぞれの免許を維持しながら相互乗り入れの工夫が必要だ」とした。

 この日のWGは初回ということで、委員が各自の教員養成等を巡る問題意識や検討すべき課題について発言した。

 その中では、「最近、新規採用教員が増えたが、専門性、指導力に不安がある。入り口でたくさん与えてもだめ。教員になって以降、大学や大学院に行かせるべきだ」「都道府県で増えている教師塾に大学も関わっていくべきだ」「大学での教員養成と教育委員会での研修が連続性を持たないといけない」「教員養成は危機に瀕している。質の低下を招いている。大学進学率の上昇を直視しない限り質の低下は防げない」といった意見が聞かれた。

 最後に、文科省の前川喜平・初等中等教育局長が挨拶に立ち、「このWGには非常に重要な役割を担って頂くことになる。(委員間で)意見が対立するようなところまで(徹底して)議論してほしい。来年の通常国会に教員免許法改正案を提出するが、再来年の通常国会にも改正法案の提出を考えている。学校教育法の改正の可能性もある。積極的に法改正をしていきたい」と語った。



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