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記事2014年5月23日 2307号 (2面) 
家庭状況と学力との関係 国研が分析結果
家庭状況SESと学力に強い相関
不利な状況でも克服法ある

 国立教育政策研究所はこのほど、家庭状況と学力との関係や、不利な環境でも成果を挙げている児童生徒、学校についての分析結果を公表した。「平成25年度全国学力・学習状況調査」に追加して実施された保護者調査の結果を基に、お茶の水女子大学(代表=耳塚寛明・理事・副学長)が分析を行った。家庭状況は、家庭所得・父親学歴・母親学歴の三つの変数を合成した指標(SES=家庭の社会経済的背景)によって、高、中の上、中の下、低の4段階にわけている。

 家庭状況と学力との関係を見ると、SESが高い児童生徒ほど平均正答率が高いという傾向が見られ、「SESと子どもの学力との間には強い相関がある」と分析された(表1)。

 しかし、SESが低い児童生徒全ての学力が低いわけではない。平日の学習時間と平均正答率の関係を見ると、低SESでも学習時間の長い児童生徒は、それに応じて平均正答率が高いことがわかった(表2)。このことから「学習時間は不利な環境を克服する手段の一つと考えられる」としている。

 環境が不利であるにも関わらず学力の高い児童生徒についてさらに細かく分析したところ、次のような特徴があったとしている。「朝食を毎日食べている、毎日同じ時間に就寝・起床」など生活習慣は規則正しく「テレビやゲームの時間は少ない」。そして「家で自分で計画を立てて勉強、宿題をし、学校の規則を守っている」。保護者は「子どもに本や新聞を読むようにすすめている、一緒に図書館に行く」など読書を働きかけており、「子どもと勉強や成績のことについて話をする、高い学歴に期待」など教育に対する関心が高く、「授業参観や運動会などの学校行事に参加している」。これらの要素はSESの影響を取り除いて分析しても、高い学力との関係が見られるという。

 また、学校全体の平均正答率を見ると、児童生徒のSESから統計的に予想される学力を大きく上回る成果を上げている学校があったため、訪問調査によってその特徴を捉えた。「家庭学習の指導の充実(宿題以外の自主学習等に取り組ませ、教員が毎日チェック・コメントしているなど)」「黒板に『めあて』を書いて授業のねらいを明確化、読書習慣の形成に注力、教育課程全般で『聞くこと』だけでなく『話すこと』『書くこと』に力を入れている」「基礎・基本の定着の徹底を図る、少人数指導や習熟度別指導を導入している」「教科の指導内容や指導方法、生活規律面などについて小中連携を推進している」などの特徴が共通して見られたという。



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