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記事2014年4月3日 2302号 (1面) 
下村文科相、今後の審議事項、予定を説明
中教審総会 わが国の厳しい環境等改善へ
学制改革等を推進




 下村博文・文部科学大臣は3月28日、中央教育審議会(文科大臣の諮問機関、安西祐一郎会長)の第90回総会で、わが国の経済社会や教育を取り巻く危機的状況等を説明。その上で大きな転機となる2020年(東京オリンピック開催年)までの6年間(2014年2月〜2019年2月)に、国民一人一人の豊かな生活とわが国の成長・発展の実現に必要な教育の充実策として、今後審議が必要な課題等を整理し提示した。大臣が中教審委員と共通認識を深めようと示したもので、その後、大臣と委員との意見交換が行われた。




 下村大臣は、初めに経済や社会のグローバル化が進む中で、わが国が置かれている環境に関して、1993年に世界第2位だった国民1人当たりのGDP(国内総生産)が2011年には世界14位に低下、また世界のGDP(国内総生産)全体に占める日本のGDPの割合は2010年の5・8%から2050年には1・9%にまで落ち込む見通しなど、わが国の国際的な存在感の低下が顕著であることを指摘。

 さらに日本人の海外留学生が減少傾向にあり、少子化・高齢化の進展、親の収入と子どもの大学進学率が相関関係にあるなど格差の固定化も見られ、また、わが国の子どもの貧困率もOECDの平均値(13・3%)を上回る15・7%(2009年)であること、わが国の高校生の自己肯定感は米国、韓国、中国の半分以下の水準で、社会人の学び直しも国際的に極めて低い水準にあるなど課題山積の状況を説明。

 その上で、それら課題の解決のためには教育改革が不可欠で、「(今回が)教育改革のラストチャンス。この機を逃すとわが国が活力を取り戻すのは不可能」と訴えた。

 今後、必要な教育改革に関しては、具体的には、現在、中教審で審議中の「高大接続・大学入試改革」「道徳の教科化」に続いて、「学習指導要領全体の改訂(英語教育を含む)」と「教師力向上のための養成・採用・研修の改革」を平成26年度中に諮問、平成27年2月に発足する次期中教審で答申を得る予定にしており、必要に応じ審議内容を教育振興基本計画に反映するなどと説明した。

 現在、政府の教育再生実行会議で審議中の学制改革に関しては、同会議の提言をまって中教審に諮問、答申を得て具体化を図る方針。

 具体的には、「義務教育年限や無償教育期間の在り方」「『6‐3‐3』の学校段階の区切り」「高等教育、職業教育」「学制改革に応じた教師の在り方」「学制改革に必要な条件整備」が検討される。

 さらに将来の課題としては、「幼児教育の質の向上と無償化」「高等学校教育の一層の家計負担軽減(低中所得世帯の私立高校生のさらなる負担軽減等)」「高等教育の一層の家計負担軽減(給付型奨学金の導入など)」「大学等の質・量の充実」「グローバル人材の育成」「その他(ICT教育環境の整備等)」を挙げている。

 その後行われた意見交換では、委員から、こうした改革には家庭の教育力の復活が不可欠で、家庭の責務も含め家庭教育に一歩踏み込んで答申を出すべきだ、学ぶ側の(勉学に対する)覚悟が必要だといった意見が聞かれた。こうした意見に下村大臣は、議員立法で家庭教育推進法制定の動きがあることに触れ、見守っていく考えを明らかにした。また、今後は女性と高齢者の社会参加が絶対必要で社会人の学び直しを通じて大学の質と量を高めていくこと、大学の出口管理(卒業)を厳しくしていく考えを明らかにした。

 このほか委員からは、私学教員の残業の取り扱いの検討や教科の統合を求める意見などが聞かれた。



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