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記事2014年4月13日 2303号 (1面) 
わが国はOECD加盟国中、第2位
国立教育政策研究所 問題解決能力の調査結果公表
初のコンピュータ使用型調査
数学的リテラシーと高い相関 影響は低い家庭の状況

 国立教育政策研究所(大槻達也所長)は、このほど、OECD(経済協力開発機構)の「生徒の学習到達度調査(PASA2012)のうち、国際オプションとして実施した「問題解決能力のコンピュータ使用型調査結果」を公表した。それによると、わが国の高校等1年生の平均得点は552点(OECD平均は500点)で、OECD加盟国28カ国中では第2位となった。




 この調査は、PISA2012において数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーに加え、国際オプションとして、初めてコンピュータを使用する形で問題解決能力を調査したもの。PISA2012に参加した65カ国、約51万人のうち、問題解決能力の調査には44カ国・地域が参加、わが国からは高校、中等教育学校、高等専門学校の計181校・約6300人の一年生が参加した。問題解決能力以外の調査結果は昨年12月に公表済み。

 今回の調査では、問題解決能力については、「解決の方法がすぐに分からない問題状況を理解し、問題解決のために、認知的プロセスに関わろうとする個人の能力であり、そこには建設的で思慮深い一市民として、個人の可能性を実現するために、自ら進んで問題状況に関わろうという意志も含まれる」と定義している。

 具体的には、コンピュータの画面上に現れる「試作中のそうじ機」の動きを観察して、その動きのルールを理解するといった問題や、あるいは説明書がない新しいエアコンの三つの調整目盛(ツマミ)を動かして、どのツマミで温度、湿度をコントロールできるかを突き止め、観察した結果をモデルとして表現する問題等が出題された。

 調査の結果、OECD加盟国中でわが国は、韓国(561点)に次ぎ第2位。以下、カナダ、オーストラリア、フィンランドといった順だった。参加国・地域全体では、シンガポール(562点)、韓国に次ぎわが国は第3位となった。

 習熟度レベル別では、44カ国中、わが国はレベル1以下の下位層の割合は2番目に少なく、レベル5以上の上位層の割合は3番目に多かった。

 PISA2012で調査した数学的リテラシーや読解力、科学的リテラシーと問題解決能力の関係については、いずれの国も相関係数は正の値。わが国では問題解決能力の得点と数学的リテラシーとの関係が最も強く(相関係数0・75)、次いで科学的リテラシー(0・72)、読解力(0・68)の順。ただし数学的リテラシー得点下位の生徒が問題解決能力で比較的高い得点を取っており、それがわが国の平均点を引き上げている。

 また、「問題解決における忍耐力」については、生徒の自己評価では、わが国は44カ国中最下位。ただし国研では、そのことは問題解決能力の得点に影響はしていない、と分析(相関係数0・15)。さらに、「問題解決における柔軟性」については、わが国の高校生等が自ら柔軟性があると考えている割合も44カ国中最小。国研では、「日本の生徒は、自らを問題解決における柔軟性があるとは考えていないが、そのことは問題解決における忍耐力があることよりも問題解決能力の得点に影響しているといえる」と分析している。

 そのほか、わが国では、家庭の経済状況や教育環境の違いが問題解決能力に影響する程度は低く、国研では、「わが国は平等性の高い教育システム」と評価している。



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