自由民主党と公明党は、このほど、現行より首長の権限を強めながらも教育委員会を引き続き執行機関とするなど5項目からなる教育委員会制度改革案で合意し、3月13日、合意内容が公表された。(2面に関連図表)
滋賀県大津市でのいじめ自殺事件に対する市教育委員会の対応等をきっかけに、政府の教育再生実行会議で始まった教育委員会制度改革論議は、その後、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会に引き継がれ、具体的な改革案が審議された。しかし地方公共団体が一体となった迅速な対応の必要性から首長の権限強化を求める意見と、教育の政治的中立性、継続性等から首長の権限強化を懸念する意見が衝突、最終的に意見を絞り切れず、首長を執行機関とする案と、教育委員会を性格を改めた執行機関とする案を併記する、異例の形で昨年12月に答申した。
そのため、その後政治的決着を目指して与党内で検討が続けられていた。文部科学省は今回の与党合意に沿って、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律案」など関連法案を今国会に提出する予定。
与党合意は、教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保しつつ、地方教育行政における責任の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携強化、地方に対する国の関与の見直しを目的に掲げている。
その上で、@迅速かつ的確な判断ができるよう、教育長と教育委員長を合わせた新たな責任者(新「教育長」)を置き、首長が議会の同意を得て、任命・罷免する、としている。また、首長が任期中に教育行政の責任者を任命できるよう新「教育長」の任期は3年(他の委員は4年)とし、罷免要件は現行の教育委員と同様とし、改正法の施行時点の現職教育委員、教育長は任期満了まで従前の例による、としている。
A教育委員会を執行機関とし、地域の教育の在るべき姿を十分議論できるよう、教育委員の人選で工夫を促し、教育委員会事務局については、教育行政の専門性を備えた行政職員の育成に努め、新「教育長」、教育委員は、その職務の遂行に当たって、児童、生徒等の教育を受ける権利の保障に万全を期す旨を明記すること、としている。
B地方公共団体に「総合教育会議」を設置し、会議は首長が主宰、首長、教育委員で構成されること、有識者等の参加を求めることもできること、その総合教育会議で首長が教育委員会と協議・調整し、「大綱」を策定すること、会議では予算の調整、執行や条例提案など首長の権限に係る事項等を協議の対象とする。地教行法第23条、第24条各号に定める教育委員会と首長の職務権限は変更しないとしている。
首長が教育委員会と協議・調整する対象としては、教育の「大綱」(各地域の実情に応じて定める教育の振興に関する施策の大綱)、教育の条件整備など重要な教育施策の方向性、児童、生徒等の生命または身体の保護など緊急事態への対処とし、教科書の採択、学校の教育課程の編成、個別の教職員人事(採用、異動、昇任等)など、特に政治的中立性、継続性・安定性を担保する必要がある事項は教育委員会の専権事項としている。
C新「教育長」の事務執行に対するチェック機能を強化するため、教育委員は新「教育長」に会議の招集を求めることができ、新「教育長」は、教育委員会から委託された事務の執行状況を報告しなければならない。会議の議事録の作成・公表を努力義務としている。
地教行法第26条第2項に規定する教育長に委任できない事務については変更しない。
D児童、生徒等の生命または身体の保護のため、いじめによる自殺等の防止だけでなく、再発防止の措置を講じさせる必要がある場合にも、国が是正を指示できるよう地教行法第50条を見直す、としている。
こうした与党合意に、全国市長会の森民夫会長(長岡市長)は3月14日、「これにより首長の権限が強化され、指摘されていた責任の所在の明確化が図られることを期待する。地教行法第50条の国の指示に係る見直しの検討に当たっては、地方公共団体の自主性および自立性が損なわれることのないよう適切に対処することを求める」とのコメントを公表している。