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記事2014年2月3日 2296号 (1面) 
教員免許更新失念等で失効 無くす改善策検討
文科省検討会議 カード化した「教員免許証」導入
携帯義務化、免許情報の保護者への開示奨励等検討

 文部科学省の「教員免許更新制度の改善に係る検討会議」(小川正人主査=放送大学教養学部教授)は、1月31日、同省内で第6回会合を開き、教員が自身の教員免許状の有効期限を把握しにくいことなどから年間100人前後発生している免許状失効者をなくすため教員免許更新制度に係る制度面・運用面の改善策を検討した。その中で同省は関係者による免許状情報の一元管理と共有を可能とするため、自動車運転免許証をモデルとしたカード化した「教員免許証」(仮称)の導入と携帯義務等を提案した。




 この日は、新しく委員に就任した東京都教育庁と静岡県教育委員会の教員免許担当者が免許更新制度をめぐる事務処理の現状と課題を報告。その後、同省が「制度面・運用面の改善策(論点メモ)」を提示、それを受けて検討が行われた。またこれに先立ち、新教員免許状(平成21年4月1日以降に初めて授与された免許状)と旧教員免許状(平成21年3月31日以前に授与された免許状)の違い、教員免許更新制度上の位置づけの相違点、同制度を巡り懸念される問題等が説明された。

 その上で東京都教育庁の後藤宜則・人事部選考課課長補佐は、運転免許証と教員免許状を比較し、運転免許では全国どの地域で普通自動車、中型二輪など複数の免許を取得しても常に原簿で一括管理され、ドライバー自身も免許の種類、有効期限等が記載されたカード式の免許証を所持し更新時期の確認ができる、と説明。一方、教員免許状は都道府県教育委員会ごとに管理され、他県で授与された免許情報を検索・確認できるシステムはあるが、本人の氏名や本籍等の情報が頼りで、複数の種類の教員免許状を異なる地域で取得した人の場合、その情報の関連付けが正確にできていないと、行政側が誤った証明書を発行してしまう恐れがあり、免許状情報が申請者の正確さに左右されるなどの問題点を抱えていると指摘した。

 また鈴木啓之・静岡県教育委員会学校人事課事務局参事兼課長は、課題として教員に免許状の失効が失職(公立学校の場合)に繋がることが十分認識されていないこと、教員自身が免許の有効期間(修了確認期限)を把握していないこと、旧免許と新免許では取り扱いに違いがあることが理解されていないこと、任用時に免許状が無効と判明、任用できないケースがあることなどを説明。そのため年に2回、更新対象者把握調査を実施、また任用書類等に免許の有効期間(修了確認期限)を明記するよう様式も変更しているなどの取り組みを紹介した。

 その後、同省からか運転免許証に近い仕組み、カード化した「教員免許証」(仮称)の導入と、勤務時間中の携帯義務付け、また免許状所有者が教員免許証を免許管理者に提示することにより「教員免許状情報証明書」の発行を受けられるようにすること、「教員免許状情報証明書」については学校が備え付けなければならない表簿とし、保護者の閲覧を可能とすることを奨励することを提案。さらに免許状更新講習に空きがある場合、講習開設者の判断で証明書をもたない採用希望者の受講を認める運用、現在、3月31日とされている免許状の修了確認期限や有効期間の満了日を8月31日まで延長することなどを提案、検討を要請した。

 それに対して委員からは「教員免許証」に対する異論はほとんど聞かれなかったが、免許証携帯義務に関しては抵抗感を口にする委員もあり、また教員各人の免許情報が掲載された「教員免許状情報証明書」を保護者の閲覧に供することに関しては、不必要な混乱が予想されるとして慎重な対応を求める意見が複数委員から聞かれた。

 同省は「免許証不携帯で授業ができないということはない。免許証を学校に預けてしまっては教員本人が(免許状の有効期限等の)確認を怠るのではないか」と説明した。

 修了確認期限や有効期間の満了日の延長についてはメリットがあるものの、現在の制度や事務の運用に混乱をもたらすとして、否定的な意見が多く聞かれた。
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