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記事2014年2月23日 2298号 (1面) 
「特別な教科 道徳」の位置けを
下村文科相が中教審に諮問
目標や内容、指導方法など検討
評価、検定教科書など焦点に

文部科学省は、2月17日、東京・千代田区の学士会館で中央教育審議会の第89回総会を開いた。この席で下村博文・文部科学大臣は「道徳に係る教育課程の改善等について」の諮問を行った。今回、諮問を行った理由について下村大臣は、「未だに道徳教育そのものを忌避しがちな風潮があることや、教育関係者にその理念が十分に理解されておらず、効果的な指導方法も共有されていないことなど多くの課題が指摘されている」ことを挙げた。具体的には、新たな枠組みによる教科化に当たっての学習指導要領の改訂に関わる事項を中心に審議を行い、今年秋頃を目途に答申をまとめてほしいと要請した。




 道徳の時間の新たな枠組みによる教科化に当たっての学習指導要領の改訂に関わる事項について、下村大臣は、具体的に2点についての審議を要請した。1点目が、教育課程における道徳教育の位置付けで、道徳教育の抜本的な改善を実現するためには教育課程における位置付けをより適切なものに見直すことが必要で、道徳の時間を「特別な教科 道徳」(仮称)として位置付け、充実を図る考え。同審議会ではその具体的制度設計を検討する。

 現行の学校教育法施行規則では、例えば小学校の教育課程では、国語や算数などに、道徳を加えて編成することが謳われており、私立小学校に関しては「宗教」をもって道徳に代えることができるとしている。

 大臣が言及した「特別な教科」については、その後の中教審委員による審議でも「(通常の)教科より上か下か」といった質問が出された。これに関して前川喜平・初等中等教育局長は、「他の教科と比べて上でも下でもない。他の教科とは異なるため(そうした呼称で)、例えば数値による評価をしない、専門の教員の免許状がない」と説明した。

 2点目は、道徳教育の目標、内容、指導方法、評価の検討。

 その際、同省の「道徳教育の充実に関する懇談会」(座長=鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問)が昨年12月26日にまとめた報告で、授業では検定教科書を使用することを提言したことから、そのことにも留意しつつ学習指導要領の目標・内容等の示し方について検討を要請している。

 この日の総会では同省が従来の「心のノート」を全面改訂して刊行した道徳教育用教材『私たちの道徳』が委員に配られた。委員からは概ね評価する意見が聞かれたが、現在の内容に加えてスポーツに関してドーピング禁止教育や情報モラル、防災教育、グローバルな視点で他者理解、交通安全マナー等を取り込んでほしいといった意見が聞かれた。

 文部科学省では、道徳教育の検定教科書ができ、授業がそれを中心に行うことになるまで、『私たちの道徳』を使用していくと説明した。

 この日の総会では、冒頭、非公開で、辞任した三村明夫氏の後任の中教審会長の選任が行われ、安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長が新会長に選ばれた。

 安西新会長は、「小川(正人)副会長、北山(禎介)新副会長とともに、重責を果たしたい。これからの時代は、先の見えにくい厳しい時代。主体性をもって答えのない問題に答えを見出す力、そうした方向への教育の転換が必要。受け身の教育から能動的学習への転換が必要」などと抱負を語った。
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