こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2014年12月23日号二ュース >> VIEW

記事2014年12月23日 2327号 (2面) 
フリースクール、不登校でフォーラム
安倍総理 不登校への対応を重視
法的位置付けや支援策検討へ

文部科学省は平成26年11月24日に「全国フリースクール等フォーラム」を同省内で、28日に「全国不登校フォーラム」を国立オリンピック記念青少年総合センターで開催した。文科省がこれらをテーマとするフォーラムを開催するのは初。近く有識者会議を設けて、フリースクールへの支援策等の検討を行う予定。

 下村博文文部科学大臣は両フォーラムとも出席し、24日の冒頭あいさつでは「不登校の子どもは17万人以上になるが、これまでフリースクールへの支援はほとんど無かった。安倍総理が不登校への対応を重視しており、衆院選後に文部大臣が替わってもフリースクールの法的位置付けや支援に関する議論は継続する」と述べた。その上で「今の学制は日本が近代工業化を目指していた時代のものだ。画一的な教育は21世紀のこれからに対応しきれない。学校に合わない、通えない子どもを放置せず、その潜在的な才能を伸ばす対応が求められている」との認識を語った。

 24日のフォーラムではフリースクール3施設が活動内容や課題について発表。通っている子どもも檀上に上がり、当事者の視点からフリースクールの意義を語った。一方で「全国から子どもが押し寄せて受け入れ枠が足りない」「利用料の負担を重く感じる子どももいる」等の運営面の課題も出された。その後、永井順國・政策研究大学院大学客員教授が、不登校(登校拒否)問題に関する30年余の議論等を振り返りつつ、今後の「多様な学びを創りだす協働社会」への期待について講演。永田佳之・聖心女子大学教授が、国際的な視点から見た日本のオルタナティブ(代替)教育について講演した。

 28日のフォーラムでは、まず演出家の宮本亜門氏が自身の子ども時代の経験を語った。「自分と同級生の間には感覚に大きな隔たりがあったが、『皆と同じでないと』と思い込み、無理に周囲に合わせていた。高校生の時に不登校になり、家庭崩壊の危機にまでなったが、自分のことを面白がってくれるカウンセラーと出会えたことで『人は違うから面白い』とわかるようになり、学校に行っても緊張しなくなった。こうした経験が今に生きている」と語った。

 続いて、中学校の校長や養護教諭、カウンセラー、民間の相談員など学校内外の関係者ら6人により「不登校の子どもたちに何ができるか」等がテーマのパネル討議が行われた。不登校生の復帰支援に注力している福岡県の私立立花高校の齋藤眞人校長は「まず発達障害に対する理解が必要。理解不足のために陥ってしまう事態も多い」等と話した。他のパネリストからも「農業体験等、競い合うのではない体験が大切」「教室に入れないが学校には来れる生徒もいる。保健室登校がスモールステップになる」「適応指導教室の開催が保護者に知られていないことがある。適切な情報提供が必要」「まず子どもと仲良くなることを目的に家庭訪問を繰り返す」等の具体的な意見が出た。一方、その後の会場との意見交換では不登校経験者から「家庭訪問等の働きかけは当人にはプレッシャーにしかならない」との意見が出るなど、問題の難しさがうかがわれるディスカッションとなった。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞