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記事2014年12月23日 2327号 (1面) 
大学入学者選抜を抜本的に改革
中教審が二つの答申提出 新テスト含め多元的に評価
小中一貫教育学校制度創設へ

 文部科学省の中央教育審議会(会長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)は、12月22日、同省内で第96回総会を開き、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」と「子供の発達や学習の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について」と題する二つの答申案を審議、原案通り取りまとめ、それぞれ答申として安西会長が下村博文大臣に提出した。




 前者の、高校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革を提言した答申は、幼稚園等から大学に至るまで「生きる力」「確かな学力」を育成すべく、高校教育では知識・技能の習得に加えて思考力・判断力・表現力等の能力や主体的に学習に取り組む態度の育成など質の確保・向上を進めること。また大学に関しては、学生が主体性を持って多様な人々と協力して問題を発見し、解を見出していく能動的学修(アクティブ・ラーニング)の充実など、教育の質的転換を図ること。さらに大学入学者選抜については試験の点数のみに依拠したものから、学力に加え、高校の調査書、高校までの活動報告書などを活用し受験生を多元的に評価していくというもの。こうした中で高校に関しては基礎的な学習の達成度の把握や学力を客観的に提示するものとして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を平成31年度から導入、また大学入学者選抜では現行の大学入試センター試験を廃止、新たに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を平成32年度から導入する。このテストは「教科型」に加えて現行の教科・科目の枠を超えた「思考力・判断力・表現力」を評価するため「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価する。年明け以降、両テストの詳細な制度設計が行われ、実施までにプレテストが行われる。特に英語は「聞く」「話す」「書く」「読む」の4技能を測定するため、民間の英語検定試験を積極的に活用する方針。

 一方、後者の柔軟かつ効果的な教育システムの構築に関する答申は、小中一貫教育の制度化、飛び入学者に対する高校の卒業程度認定制度の創設、国際化に対応した大学・大学院入学資格の見直し、高等教育機関における編入学の柔軟化を提言したもの。このうち小中一貫教育の制度化は、小中一貫教育学校(仮称)制度を創設、市町村の判断で設置できるようにするもので、9年間の系統性・連続性あるカリキュラム編成などを実施する。また創設する高校の卒業程度認定制度は大学への飛び入学に伴い、現行では高校中退扱いとなっているものを改め、高校で50単位、大学で16単位以上を修めていれば文部科学大臣が高校卒業と同等の法的地域、社会的評価が得られるようにするもの。大学・大学院の入学資格の見直しは、留学生を積極的に受け入れる等の観点から我が国における高卒に相当する12年の教育課程の修了に満たなくても(東南アジア諸国等には初等中等教育が11年の国もある)大学入学が可能となるような措置を講じるもので、大学院について16年に満たない場合でも同様な措置を講じる。

 高等教育機関への編入学は一定の要件を満たす高校専攻科修了者に大学編入学の途を開くもので、5年(本科+専攻科)一貫の看護高校修了者等の大学への編入学が実現することになるが、具体的には各大学が主体的に個別に判断する。

 この日の総会では、第7期の任期がほぼ終了となったことから、出席の各委員がそれぞれこの約2年間を振り返って、感想や意見を述べた。

 その中では、中教審副会長の小川正人・放送大学教養学部教授がこれまで安倍総理が開催する教育再生実行会議が課題を設定、具体的検討は中教審という流れだったことを取り上げ、「課題設定で(教育再生実行会議と中教審が)双方向の議論をしてほしい」と要望。下村文部科学大臣(兼・教育再生担当大臣)は合同で議論する機会を設ける考えを明らかにし、大臣任期中に改革をやり遂げたいと語った。また委員からは「大学入学者選抜が骨抜きにならないよう、改革の方向性に反する大学については厳しい評価をすべきだ」といった意見や地方の若者に対する高等教育機会確保の必要性を指摘する意見、改革の方向性を先取りする形での学習指導要領の弾力的運用を求める意見等が聞かれた
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