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記事2014年12月13日 2326号 (1面) 
高校での遠隔教育の在り方で「審議報告」
全日制・定時制で実施可能に
「同時双方向型」が原則

 文部科学省の「高等学校における遠隔教育の在り方に関する検討会議」(赤堀侃司座長=白〓(※)大学教育学部長・教授)は、12月8日、同省内で開いた第6回会合で審議報告案について検討、一部文言の修正等を行った上で「審議報告」として取りまとめることを決めた。検討会議はこの日が最終回となった。同検討会議は少子化・過疎化が進展する中で、今後、各教科・科目等の専門知識を有する教員を十分に確保できなくなっていくことや、高校教育の質の向上を目指して、他地域のさまざまな専門性のある教員の高度な教育に触れる機会の提供を図るなどの観点から、現在は原則的に認められていない高校全日制・定時制の、ICTを活用した遠隔教育を認める必要性を提言したのがポイント。

 全日制・定時制課程における遠隔教育の原則としたのは、学校から離れた空間へ、インターネット等のメディアを利用して、リアルタイムで授業配信を行うとともに、質疑応答の双方向のやりとりを可能とする「同時双方向型」。導入の要件としては、@卒業に必要な74単位中36単位を上限としている。ただし科目ごとに一部直接対面授業を実施するA授業を配信する側の教員については、担当教科の免許保持者であり、受信側高校に属する教員でもあること。受信側は、原則として当該高校の教員(担当教科以外でも可能)の立ち合いの下で実施するB教科書・教材は現行通りC評価者は配信側教員―を挙げている。また、留意点として、▽可能な範囲でICT支援員等の技術サポート人材を配置する▽モニターでは見づらい場合、プリント教材等を事前に準備する▽生徒の質問機会の確保、受講生徒数の規模適正化(原則、40人以下で適切に学習評価を行える環境)等を指摘している。

 一方、別の空間・時間で事前に収録された授業を、学校から離れた空間で、インターネット等のメディアを利用して配信を行うことにより、視聴したい時間に受講することが可能な「オンデマンド型」による遠隔授業については、高校全日制・定時制課程において不登校生を対象とした現行制度(通信の方法を用いた教育は36単位を上限として単位認定)の対象を、療養中の生徒及び障害のため通学して教育を受けることが困難な生徒に広げる方針。ただしオンデマンド型に関しては、今後、アクティブ・ラーニングや英語の4技能の習得がより強く求められることから、さらに対象範囲を広げることについては慎重に検討する。

 また、同時双方向型の授業では、現在、一定の条件下で公表された著作物を権利者の許諾なく利用することが可能となっているが、オンデマンド型はその対象にはなっていないため、今後、遠隔教育における著作物の利用の円滑化に必要な取り組みについて検討が行われることが望まれる、と報告書では指摘している。

 インターネット等を活用した授業が認められている高校通信制課程については、これまでの制度改正で弾力化が図られてきたことから、現行制度以上の弾力化は教育の質の確保の面から課題が多いとして、今回の改革に際しては現行制度を維持する、としている。同省では今後、遠隔教育に関する規定の明確化、単位の認定についてなどの制度改正を行う予定。
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