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記事2014年11月23日 2324号 (1面) 
次期学習指導要領の在り方で諮問
中教審総会 学びの質、成果の視点を重視
平成28年度中に答申へ

 中央教育審議会(会長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長)の第95回総会が11月20日、東京・霞が関の文部科学省旧庁舎講堂で開催され、次期の学習指導要領等(「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」)が下村博文・文部科学大臣名で諮問され、丹羽秀樹・文部科学副大臣から安西会長に諮問文が手渡された。総会ではこの他、高大接続と小中一貫教育校の制度化等の、二つの答申案が議論された。諮問の趣旨説明の中で、子供たちが厳しい挑戦の時代を乗り越え、未来を切り開いていくために、知識の質・量の改善に加え、「どのように学ぶか」という学びの質と、「どのような力が身に付いたか」という学びの成果の視点が重要とした。

 審議すべき具体的内容では、第一は、教育目標・内容と学習・指導方法、学習評価の在り方を一体として捉えること。視点は、言語・文化の異なる多様な他者と協働しながら創造的に生きていくために必要な資質・能力の育成と各教科等の役割や相互の関係。学校評価の改善と、アクティブ・ラーニング等の新しい教育手法による学習成果の把握と評価など。

 第二は、育成すべき資質・能力を踏まえた、新たな教科・科目の在り方や、既存の教科・科目等の目標・内容の見直しについて。中でも、グローバル社会の中で外国語で意見を述べ交流していく力が必要とし、特に英語能力について一貫した具体的な指標の形で示すことを求めた

 高校では、今後選挙権が18歳以上となることを踏まえ、大人としての行動規範や社会生活を営む力を身に付けるための新たな科目、地理歴史科の見直し、高度な思考力・判断力・表現力等を育成する新たな教科・科目、より探究的な総合学習の改善、専門学科のカリキュラムと職業教育の充実などが挙げられた。

 この他、幼児教育と小学校教育の円滑な接続、体力向上・健康増進、特別支援教育の見直し等が挙げられている。

 第三には、各学校におけるカリキュラム・マネジメントや学習・指導方法および評価方法の改善を支援する方策についての検討を要請している。

 最後に丹羽副大臣は、審議の取りまとめを平成28年度中にお願いしたいと述べた。

 安西会長は、世界の大きな流れの中で次期学習指導要領の策定は中教審の最重要課題の一つだと述べ、あらためて委員に協力を要請した。

 この他二つの答申案が議論された。

 「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改善について(答申案)」では、新テスト「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の導入、大学入学者選抜では思考力・判断力・表現力を中心に評価する新テスト「大学入学希望者学力テスト(仮称)」の導入を行うとした。各大学はアドミッション・ポリシーに基づく多角的な入試(AO入試)に転換していくことになるとし、文科省としては、各大学がそういう方向に転換していけるよう、評価・評価手法・ノウハウの確立を考えつつ財政的措置を行いたいとした。

 複数の委員から、多様な視点での入学者決定となれば公平性の点で問題が出てくるだろうとし、特に「国立大学においては公平性の問題から訴訟もあり得る。アドミッション・オフィスの整備が重要だ」との意見や「子を持つ家庭で混乱が起こる。周知が必要だ」などの意見が上がった。

 もう一つの答申案「子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について」では、小中一貫教育の制度化、大学への飛び入学者に対する高卒と同等との大臣認定、高等学校専攻科からの大学への編入学を可能にするとしている。

 委員からは、小中一貫教育校について成果が挙がっているとの意見が出た一方で、中高一貫校との関係はどこに入っているのかとの指摘や、二つの答申案とも子供や保護者・家庭の立場からの目線がないとの指摘もあった。

 安西会長は、新しい大学入学希望者学力テストは平成33(2021)年度から始めたいとし、学習指導要領の策定も含めて「課題は多々あるが、将来のわが国の教育の在り方を確立していくという目標は共有していきたい」と述べた。二つの答申案については12月の中教審総会でまとめたいとした。
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