政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)は9月17日、総理官邸で第25回会議を開き、今後の会議運営について議論、同会議内に第1から第3までの三つの分科会を設け、@これからの時代に求められる能力を飛躍的に高めるための教育の革新A生涯現役・全員参加型社会の実現や地方創生のための教育の在り方B教育立国実現のための教育財源など教育行財政の在り方を検討していくことを決めた。今月から三つの分科会で順次、議論を開始、検討結果を親会議に報告、親会議での審議を経て、来年1月から6月にかけて三つの提言が公表される予定。
同会議は、安倍総理が内閣の最重要課題の一つに掲げた教育再生に向け昨年1月から、長年議論されながら実現に至らなかった課題を中心に議論、これまでに五つの提言をまとめている。
その提言に沿って既に教育委員会制度改革や大学ガバナンス改革に関連する法律の改正等が行われ、「教育再生」が現実に移されつつある。
しかし安倍総理は、9月17日の同会議で、「教育再生は道半ばであり、更なる抜本的な改革について、引き続き議論を続ける必要がある。これからの時代に求められるイノベーション人材や起業家の育成、社会人の学び直しや女性の活躍支援、地方創生の在り方、教育立国実現のための教育行財政の在り方などの課題について未来を見据えた議論をお願いしたい」と語っており、この日の会議を境に同会議の「第2ステージ」が始まったことになる。また、同会議の有識者に新たに漆紫穂子・品川女子学院校長と向井千秋・宇宙航空研究開発機構特任参与が選任されている。
新設される3分科会の構成員には同会議有識者がそれぞれ5人から7人配置されるほか、分科会ごとに設けられた検討課題に合わせて専門家(分科会有識者)が5人ずつ加わり、各分科会は全体で10人から12人の体制となる。
このうち教育の革新を検討する第1分科会には小林りん・インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢代表理事や鈴木典比古・国際教養大学理事長・学長らが、地方創生の教育等を検討する第2分科会には佛淵孝夫・佐賀大学長や松浦正人・防府市長らが、教育財源問題等を検討する第3分科会には土居丈朗・慶應義塾大学教授や松田茂樹・中京大学教授らが専門家として参加する。
このうち、これからの時代に求められる能力を飛躍的に高めるための教育の革新を検討する第1分科会では、わが国のイノベーション創出やグローバル化を担う人材の育成、新たな価値創造に挑戦する起業家精神の育成、ICT教育およびその活用、教育方法の転換による教育の質の向上を審議する。地方創生の教育の在り方等を検討する第2分科会では、生涯現役・全員参加型社会の実現のための教育の在り方、地方創生のエンジンとなる教育の在り方を審議する。教育財源問題等を検討する第3専門部会では、わが国を取り巻く状況の変化を踏まえた教育投資の効果、これからの教育投資、それを実現する教育行財政の在り方、教育財源の確保の在り方を審議する。
これからの教育投資、それを実現する教育行財政の在り方の検討の中では、国と地方の役割・関係、国公立学校と私立学校の役割・関係、それに応じた公財政支出の在り方についても審議することになっている。
教育再生実行会議における今後の検討課題
第1分科会
これからの時代に求められる能力を飛躍的に高めるための教育の革新
1.我が国のイノベーション創出やグローバル化を担う人材の育成
2.新たな価値創造に挑戦する起業家精神の育成
3.ICT教育及びその活用、教育方法の転換による教育の質の向上 など
主査:佃和夫(三菱重工業株式会社相談役)
第2分科会
生涯現役・全員参加型社会の実現や地方創生のための教育の在り方
1.生涯現役・全員参加型社会の実現のための教育の在り方
2.地方創生のエンジンとなる教育の在り方 など
主査:貝ノP滋(三鷹市教育委員会委員長)
第3分科会
教育立国実現のための教育財源など教育行財政の在り方
1.我が国を取り巻く状況の変化を踏まえた教育投資の効果
2.これからの教育投資、それを実現する教育行財政の在り方
3.教育財源の確保の在り方 など
主査:鎌田薫(早稲田大学総長)
「公設民営学校」の開設
自民党・文部科学部会 疑問点や危惧は解消せず
国家戦略特区で設置が検討されている「公設民営学校」(公立学校の運営を民間に委託する)の是非等について検討を続けている自由民主党の文部科学部会(部会長=冨岡勉・衆議院議員)は9月30日、党本部内で9月18日に続いて同問題の検討を行った。この日は文部科学省関係者に加えて、内閣府の関係者も出席した。
公設民営学校に関しては、これまで議員から疑問や慎重な対応の必要性を求める意見が相次いでいたため、この日はこれまで議員の指摘に対する文科省の考え方が文書で示された。それによると大阪市(橋下徹市長)が希望している国際バカロレア(教育)は教育課程特例校制度など現行制度の活用でできるのではないか、との疑問には、「極めて高度な能力を有する多様な人材が必要なため、地方公務員制度下ではそうした人材の活用が困難」とし、非公務員として民間人のまま雇用することを可能とする国家戦略特区の必要性を指摘している。また公設民営学校の教育分野に関しては、発達障害や芸術、スポーツなど特別なニーズに対応する教育を対象とすべきだとの意見に対しては、国家戦略特区が国際競争力の強化等を目的としたものであることを説明、しかし発達障害など特別なニーズを有する生徒を受け入れていくことも想定される、としている。しかし議員の疑問や危惧は解消されず、もう一度部会でていねいに説明を行うこととなった。
したがって開会中の臨時国会に関連法案を提出することについての了承は保留となった。