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記事2013年9月13日 2283号 (1面) 
教員免許状更新講習 選択必修領域新設へ
文部科学省 教員免許更新制見直し
検討会議始動 現代的諸課題に対応
10年経験者研修との役割分担も
文部科学省は平成21年4月に導入した教員免許更新制度を見直すことを決め、9月13日、省内で10人の委員からなる「教員免許更新制度の改善に係る検討会議」の初会合を開いた。@小学校外国語活動や道徳教育、特別支援教育といった現代的な諸課題に対応できる教員免許状更新講習に係る枠組み・内容の改善A免許状更新講習と現職研修との役割分担の在り方B教員免許更新制度に係る制度面・運用面での改善策―を検討する。このうち@とAに関しては年内に3、4回程度の会議を開き、審議内容を「中間報告」としてまとめる予定で、来年7月には、Bの検討結果を含め最終報告を取りまとめることにしている。主査は中央教育審議会初等中等教育分科会長の小川正人・放送大学教養学部教授。

 この日は、初めに同省から教員免許更新制度を見直す趣旨や検討事項例等が説明された。
 それによると、▽平成19年に改正された教育職員免許法の附則では同制度の導入後5年を経過した後に免許状更新講習に係る制度について検討を加え、必要に応じて所要の措置を講じるとしている▽同法が改正された際、衆参両院の委員会で、現職研修と免許状更新講習との整合性の確保、特に10年経験者研修の在り方について検討するなどの附帯決議が採択されている▽現在、教員には、いじめ問題やICT教育、英語教育などのさまざまな現代的な課題に対応する指導力が求められている▽制度誤解に基づく手続きミスによる免許状失効・失職が後を絶たない、などが見直しの理由。
 また、@の検討課題に関しては、免許状更新講習の必修領域(12時間の講習)は、「教職についての省察」、「子どもの変化についての理解」、「教育政策の動向についての理解」、「学校の内外における連携協力についての理解」の4項目(8内容)を含むものとされ、更新講習を開設している大学からは、「範囲が広すぎて深い学びができない。この4年間で教育の状況が変わってきたが、新しいものを導入できない」といった声が聞かれ、教育委員会からは、選択領域(18時間の講習)での講習に関して、教員の興味・関心から免許状の教科と関係ない科目を選択する教員を疑問視する声がある―と同省では説明した。
 そのため同省では教員が勤務する学校種や免許種に応じて現下の教育課題を学べる環境を充実するため、選択必修領域の新設の検討を要請した。
 具体的には必修・選択必修・選択の各領域を何時間程度ずつとするか、必修・選択必修の項目・内容数、講習方法や講習講師に関する配慮、対応講習数の少ない免許種所有者への配慮等が論点例とされている。
 Aに関しては、効果的な講習形態の在り方、修了認定試験の内容、実施方法、修了認定方法の在り方などが検討事項例。
 Bに関しては、制度誤解に基づく手続きミスによる失効・失職への対応、免許状の有効性の確認ミスによる採用取り消しへの対応、救済措置の必要性、免許状更新期限の管理等免許事務の負担と困難への対応、非現職教員に対する周知徹底・理解促進の困難への対応等が検討事項例。
 この日は初会合ということから委員各自が教員免許更新制度等に対する考えなどを発表した。
 その中では、「必修領域を講義できる大学教員が限られ、講師陣に疲労感がたまっている」「離島が多く、講師の負担が大きい」「現場のニーズに応えないと教員の意欲につながらない。発達障害(の理解)は喫緊の問題。必修でよい」といった意見が聞かれた。
 また、免許状更新講習が他の研修や部活動の大会等もある夏季休業中に行われることから日程的な厳しさを訴える意見や10年経験者研修を免許状更新講習に読み替えているといった報告や桜美林大学でのeラーニングによる免許状更新講習の現状等も聞かれた。同省の調べによると同一年度内に10年経験者研修と免許状更新講習の受講が重複する割合は平成23年度で17・4%、また10年経験者研修と免許状更新講習を同一年度内に受ける者に対して都道府県、指定都市、中核市の教育委員会の19・6%が研修時間を減じる、先送りを認めるなどの軽減措置を講じていた。
 講習内容に関しては、免許状更新講習の必修領域の内容は項目によって10年経験者研修で取り扱われる内容と40%から100%近い割合で重複していることも同省の調査で明らかになっている。


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