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記事2013年4月13日 2269号 (2面) 
第7期中教審の分科会が次々に初会合
教育振興基本計画 答申素案を審議
今後の審議事項と審議体制決定
大学分科会    

 第七期中央教育審議会になって初の大学分科会が四月四日、文部科学省内で開かれ、前期に続き安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長が分科会長に選任されたほか、今後二年間の審議項目や審議体制等が同省から提案され、了承された。
 審議に先立ちあいさつした安西分科会長は、大学教育が今、まさに正念場を迎えていることを指摘、早急な大学改革の必要性を強調した。また、文科省の板東久美子・高等教育局長が、大学改革実行プランに基づき大学改革を着実に進めてきたが、今後は加速が必要であり、総理直属の教育再生実行会議が大学改革や大学入試改革を検討する予定のため同会議と連動して議論を進めることが必要で、社会人の学び直し、大学のガバナンス等について積極的に意見を頂きたいと語った。
 第七期の大学分科会では、@社会経済構造の変革を踏まえた大学改革の在り方A求められる知識・技能の高度化に対応した進路選択・学修機会の充実B大学の質保証の充実C我が国の大学のグローバル化の促進D大学のガバナンスの在り方E短期大学の役割の充実F大学院教育の在り方G法科大学院教育の改善―の八点が検討課題とされた。これら検討課題については、大学分科会内に「大学教育部会」、「大学院部会」、「組織運営部会」(新設)、「大学のグローバル化に関するワーキング・グループ」(新設)、「法科大学院特別委員会」、「認証評価機関の認証に関する審査委員会」(新設)を設け検討を進めていく。

国公私立大学が競争できる環境づくりを

 この日は、中教審の教育振興基本計画部会が大詰め段階の審議をしている第二期教育振興基本計画に関する答申素案が検討された。委員からは、「日本の教育に対する公財政支出の比率(GDP比)が少ないことはそうだが、研究費を含んでおり、教育に使われているものはもっと少ない。私学も含め配分の見直しをしてほしい」「これまでわが国のグローバル化の遅れを訴えてきた。(答申素案では)どこに行こうとしているのか見えてこない」「グローバル人材育成にはどのくらいのコストがかかるのか少し議論が必要」「高卒者の五六%が大学に進学する。グローバル化は一部の大学に期待するのか。全ての大学でグローバル人材の育成をすると混乱する」「検討項目、審議項目については既に答えが見えている。企業なら三カ月で実行に移せる。審議はうんと加速してほしい」といった意見が聞かれた。
 このほか国公立大学と私立大学が競争できる環境づくりに向けた予算、社会人の学び直しが頭打ちの状況の原因究明なども指摘された。政府の第二期教育振興基本計画(平成二十五―二十九年度)は今後の五年間の教育政策の方向性や到達目標等を定めるもの。中教審の各分科会での審議を経て、教育振興基本計画部会で意見を集約、早ければ四月中にも答申としてまとめられる見通し。

高校教育の在り方等審議
幼保連携型認定こども園保育要領を策定へ

初等中等教育分科会


 第七期中央教育審議会で初の初等中等教育分科会が四月三日、文部科学省内で開かれ、冒頭、小川正人・放送大学教養学部教授が分科会長に選任された。分科会長代理は無藤隆・白梅学園大学子ども学部教授兼子ども学研究科長。その後、第六期初中分科会の審議状況や、第七期に審議する事項案が説明され、了承された。
 第七期で審議する事項は、@今後の高等学校教育の在り方(高等学校教育部会で)A幼保連携型認定こども園保育要領(仮称)の策定(教育課程部会中心に)B教員養成課程の質の向上等について(教員養成部会を中心に)Cその他(教育再生実行会議において提起された課題等についても、今後、必要に応じて審議)―の四点。
 続いて第二期教育振興基本計画に関する答申素案の概要が、昨年の審議経過報告から変更された箇所を中心に説明され、審議が行われた。
 委員からは、「各教育委員会、各学校は(答申を)どのように読み、受け止めたらいいのか。実践する側の学校からすると、どう(答申内容を教育に)組み入れていったらいいか。(答申の)押さえどころ、読み方に関するメッセージの指摘も大事」「高校進学率が九八%の中で、高校教育の質保証が言われている。中学から高校に上がった段階から既に学力に格差が生じている。(質保証の)基準をどこに置くのか。どこまでやるかが心配。また、学校施設の安心・安全に関しては、私立学校では補助金で耐震改修工事が行われている。幼稚園に関しては改築工事への補助も出されているが、小中高校は認められていない。建て替えをした方が安全なので、補助の在り方の検討が必要だ」といった意見が出された。
 また、「文部科学省行政のグローバル化を進めることが大事。海外への情報発信が大事で学習指導要領、教科書を英語で読めるようにすべきだ。英語を話せる職員も必要。教育に関わるエビデンスの収集を進めるべきだ。東南アジアと比べても収集が遅れている。幼児教育に関しては国家プロジェクトとしてエビデンスの収集をしている国もある」「答申内容の優先順位、重みが分からない。答申を出して予算が半分しか取れなかったら、どういう配分にするのか、運用面、戦略面はどうか」「できれば免許制度改革による質保証にもう一歩踏み込んでほしい」などの意見が聞かれた。
 その後、幼保連携型認定こども園保育要領(仮称)の策定に関して、布村幸彦初中局長が教育課程部会を中心に教育の観点から審議してほしいと要請、同要領に関しては、同時期に厚生労働省の社会保障審議会で保育の観点から検討が行われること、平成二十七年四月からの施行を想定しており、平成二十六年三月ごろに告示するため、来年年明けごろに提言を頂きたいと語った。同要領の検討に当たっては文部科学、厚生労働の両省の会議が合同で検討する機会を設ける意向も説明された。
 その後、第七期の一回目ということから自由討議が行われた。委員からは、「義務教育の中で力のある子ども(の学力)を伸ばすことにも先生は意を用いてほしい」「土曜日の授業が全国的に増えている。東京都では積極的に行われている。土曜日は学力の向上でも地域との連携でも使い勝手がいい。ただし教員の勤務時間に関してはうまい方法を考えてほしい。道徳の教科化が言われているが、学校現場では今もしっかり道徳教育は行われている」「一部の才能ある子は義務教育の中ではなかなか伸ばせない。教育委員会が義務教育ではなく、生涯学習と連携してやればできる。地域の教育が随分充実してきた。土曜日も授業をすることで、せっかく出てきたそうした芽がつぶれてしまう」「教育委員会についての議論は大賛成。教育委員会には教育行政のプロパーが少ない。そのため改善の努力が少ない。初中分科会からの発信が大事」といった意見が聞かれた。


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