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記事2013年4月13日 2269号 (1面) 
英語、理数、ICTに1兆円集中投資
グローバル人材育成へ 安倍総裁に提言提出
自民党教育再生実行本部
国公立大TOEFLを入学卒業要件に 2010年代中に1人1台のタブレットPC
 自由民主党の教育再生実行本部(本部長=遠藤利明・衆議院議員)は、「成長戦略に資するグローバル人材育成部会提言」をまとめ、四月八日、安倍晋三総裁(総理)に提出した。提言の冒頭では「安倍内閣が掲げる経済再生には人材養成が不可欠。成長戦略実現上、投資効果が最も高いのは教育」と指摘、@英語教育の抜本的改革Aイノベーションを生む理数教育の刷新B国家戦略としてのICT教育の実現を提案、それらの改革実現のため、当面、一兆円の集中投資が必要としている。

 自民党は政権復帰後の今年一月、教育再生実行本部を再開、遠藤本部長の下、成長戦略に資するグローバル人材の育成・そのための学力の向上策や学制改革、大学入試の抜本的改革など四つの重要課題を検討してきた。
 そのうち今回、同本部の「成長戦略に資するグローバル人材育成部会」(主査=山本順三・参議院議員)の提言がまとまったもので、英語教育の抜本的改革等に当たっては、わが国が結果の平等主義から脱却し、トップを伸ばす戦略的人材育成を行う一方で、学び直しや土曜日の活用による学力の徹底した底上げを図ることを求めている。
 特に英語教育の抜本的改革では、国公立大学の入学・卒業の要件としてTOEFL(米国の非営利団体が運営する英語力検定試験)等を義務化する考え。大学入学試験では受験生にTOEFLを課すため、従来の英語の試験は行わない方針。
 高校段階でも「TOEFLiBT」四十五点(英検二級)等以上(満点は百二十点)を全員が達成することを求め、英語教師の採用に当たっては同試験で八十点(英検準一級)程度以上等の取得を求めていく。私立大学については私学の自主性を尊重し、義務化しない。
 大学入試でのTOEFL義務化には、システムづくりや周知期間で五年は必要と見込んでおり、平成三十年ごろからの実施となる見通し。国公立大学の入学者選抜でTOEFLの一定水準の点数取得が要件となれば、高校以下の英語教育が大きく変質する可能性もある。また、理数教育の刷新では、博士号取得者を現在の年間約一万六千人から欧米先進国並みの年間約三万五千人に倍増させる。学部段階の優秀な学生が途中で就職せず、博士課程にまで進学、日本全体のイノベーション力向上につながるよう奨学金制度の充実、ポスドク問題の改善など環境整備を行う考え。さらに大学入学時に必要な学力として、文科系でも理数の力を重視していく。当初、同本部では大学入試で理数系教科を義務化する方針だったが、私学の自主性を考慮し、より緩やかな表現に改めたが、私学でもそうした取り組みを促していく方針。このほか小学校の理科の授業は全て理科の専科教員が担当、先進的な理数教育を行うスーパーサイエンスハイスクールも大幅拡充する。ICT教育に関しては、国家戦略として二〇一〇年代中に一人一台のタブレットPC(情報端末)を、無線LAN、電子黒板等の環境とともに整備する。一兆円の教育への集中投資でこうした改革・環境整備を五年程度の年次計画で実現する計画で、一兆円のうち約五千億円がICT教育関係、四千億円が英語教育関係、一千億円が理数教育関係。
 同本部では、今回の提言内容と、五月中に意見集約する予定の学制改革(六・三・三制の見直し)、大学入試の抜本的改革、新人材確保法の制定を整理して、夏の参議院議員選挙の公約に盛り込む意向。特に六・三・三制の見直しでは、飛び級、留年、学び直し、一貫教育など個人の興味や状況等で横≠フ移動が可能となるよう、複線型の教育システムに改める方針。遠藤本部長は、戦前の方がより複線型の教育システムになっていたと語っており、安倍総裁も提言を受け、複線型の学制が大事と発言している。


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