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記事2013年2月3日 2262号 (1面) 
中教審高校教育部会が審議経過報告
質保証のための共通テスト 「希望参加型」を明記
なお性格は不明、次期の中教審で議論継続へ
 中央教育審議会初等中等教育分科会の高等学校教育部会(部会=小川正人・放送大学教養学部教授)は一月二十八日、文部科学省内で第十七回部会を開いた。この日は、第六期中教審最終の部会で、これまでの審議内容を集約した「審議経過報告案」が討議され、委員からさまざまな意見が出された末、報告案の細かな修文を小川部会長に一任して「審議経過報告」を取りまとめることを決めた。ただし高校教育の質保証の観点から実施が検討されてきた共通的なテストについて、全国的な規模で行う「希望参加型のテスト」(高校学習到達度テスト・仮称)としたことに、複数の委員から「質保証の観点からすると希望参加型ではなく、多くの参加が必要。(希望参加型では)不完全になる。工夫が必要だ」、「全ての生徒に共通に身に付けさせる『コア』と希望参加型のテストでは矛盾していないか」などの意見が出された。「コア」とは全ての生徒に共通して身に付けさせる資質・能力のこと。
 また、共通的なテストの性格に関する意見も数多く聞かれた。「希望参加型のテストと(中教審高大接続特別部会で検討されている)高大接続テストとはどう違うのか」、「『コア』とテストとの関連性がよく分からない。ある人たちのためのテストになっていくのか」、「ステップアップできるタイプのテストなら生徒の意欲(向上)につながるかもしれないが」「一番大事なことはテスト結果を生徒にフィードバックしていくことと国の支援で、それを中心に据えた議論をしてほしい」、「(共通的なテストは)生徒一人一人が高校に関係なく応募できることが大事。高校生が自分でつかみ取っていくためのテストであってほしい」、「本人の将来につながるものなら全員がテストをする必要はない」といった意見が次々と出された。こうした意見に小川部会長、安彦忠彦副部会長等は、テスト等の具体的な内容については、次の第七期中教審に議論を委ねる形で議論を収拾した。同部会は、二十年ぶりの抜本的な高校教育改革議論を目的に、平成二十三年十一月に初会合を開き、議論を開始した。第十七回部会での安彦副部会長の発言にもあったが、高校教育の『コア』の中身を固めきれなかったことが全てに影響する結果となった。
 大学関係者や企業関係者からは高校教育への質保証の仕組み導入が強く要請された。そのため高校教育部会の議論は、終盤、共通的なテストが中心テーマとなったが、多様化が進んだ高校教育の「コア」を規定しきれなかったことなどが踏み込んだ改革提言をまとめるまでには至らなかったことにつながったといえる。
 第十七回部会で示された審議経過報告案はA4判二十二ページ。全ての生徒に共通して身に付けさせる「コア」についての基本的な考え方や、高校教育の質保証に向けた仕組みについての基本的方向などに言及している。基礎的・基本的な知識・技能や、課題解決に必要な思考力・判断力、表現力等については希望参加型のテストの活用、技能検定の活用等を促進、客観的な評価の充実を図ることを提言。また、客観的な評価の対象とすることが困難な、学習への意欲・態度、市民性、道徳的な価値・倫理観等については評価の手法、評価指標等の調査研究推進を求めている。


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