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記事2013年2月13日 2263号 (2面) 
OECD Japanセミナー開催
A.シュライヒャー氏講演 高等教育のグローバル戦略 テーマに
世界水準大学には 豊富なリソース、ガバナンス等が必要
 「高等教育のグローバル戦略―世界動向と政府の役割の再検討」をテーマとしたOECD/Japanセミナーが二月六、七の両日、東京・大岡山の東京工業大学蔵前会館で開かれた。グローバル化が高等教育に与えた影響、国境を越えた域内協力や国際的な質保証への取り組みなどについて、講演、パネルディスカッション、分科会を通して議論が行われた。
 OECD事務総長教育顧問・教育局次長のアンドレア・シュライヒャー氏が、OECDから見たグローバル時代の高等教育について基調講演を行った。
 シュライヒャー氏は、世界中で大学生の数が増えており、高等教育を受けた者がもたらす税収は、政府が高等教育に投資した額を上回っていることを、データを示しながら説明。各国のGDP成長率にも大卒者が大きく貢献していることも示した。
 世代間の教育に関する流動性については、OECD加盟国のデータを見る限りでは、親の低学歴が、子どもの高等教育を受ける可能性を必ずしも左右するものではないと指摘。むしろ、中等教育段階までの教育システムの公平性が確保されていることが、高等教育の公平性と緊密な関係を持つとした。
 また、個人のスキルは、二〇―三〇歳台をピークに下降していく傾向が見られるが、教育への投資がなされ、高等教育への参加率が高い国で、年齢上昇とともに上向く例もあるとした。
 続いて、元世界銀行高等教育コーディネーターのジャミル・サルミ氏が「ワールド・クラス・ユニバーシティー」(WCU、世界水準の大学)とは何かを明らかにしながら、各国での取り組みや課題などについて講演した。
 サルミ氏は、大学ランキングで上位に位置する大学を分析し、国際市場を含めた優秀な人材の確保、公的支援や寄付金を背景とした豊富なリソース、適したガバナンス―などをWCUの要素として挙げた。
 半面、WCUへの取り組みに伴うリスクとしては、政府によるリソース配分の偏重、競争圧力、世界中での人材の奪い合い、大学の画一化―などを指摘。全ての大学が同じWCUを目指すのではなく、他と差別化を図る勇気を持ち、違う形でワールド・クラスの高等教育システムをつくることが必要だとした。
 その一つの方策として、絶えず自己に挑戦し、自身の大学を刷新し、改善し続けることで「アカデミック・エクセレンス」を目指す道を示した。
 サルミ氏は「WCUのレシピ」は「たくさんの人材、たっぷりのリソース、ほんの少しのガバナンス、そして、長時間じっくりと煮込むこと」だと締めくくった。


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