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記事2013年12月23日 2293号 (2面) 
地方教育行政の在り方で答申提出
次期通常国会に法案提出目指す 下村文科相

総会




 中央教育審議会は平成25年12月13日、文部科学省内で第88回総会を開いた。地方教育行政の最終的な責任者(執行機関)を教育委員会から首長に移す案を主とした答申「今後の地方教育行政の在り方について」を下村博文文部科学大臣に提出したほか、大学のガバナンス改革の推進についての審議、OECDが実施した生徒の学習到達度調査(PISA2012)の結果報告などが行われた。地方教育行政の改革は25年5月以来、教育制度分科会が20回の会合を開いて審議を重ねた。

 提出された答申は、首長が直接任免する教育長を日常的な教育事務の責任者とする、執行機関は首長に移す、といった内容。「別案」として、現行制度と同様に教委を執行機関とする案も併記されている。答申を受け取った下村大臣は「教育委員会制度の改革は地方自治制度の根幹に関わる重要なもの。責任ある地方教育行政体制の構築に向けて、次期通常国会への法案提出を目指す。別案などの議論も反映するような幅広い視点を持って法案を作成したい」と述べ、これが26年度の文科省の最重要法案だとした。

 ガバナンス改革の推進については、大学分科会組織運営部会の審議まとめ案を審議した。まとめ案は学長のリーダーシップの在り方を具体的に記述、教授会については@教育課程の編成A学生の身分に関する審査B学位授与C教員の教育研究業績等の審査の四つが審議事項だと明確にしている。委員からは「元より教授会は審議機関であり、最終的な決定はできないことになっている。にもかかわらずこの現状なのだから、法改正にまで踏み込むべきでは」等の意見が出た。この審議まとめは25年12月24日の大学分科会に報告される予定。PISA2012は65の国・地域の15歳男女約51万人が受けた学力テストで、日本の結果について「数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3分野全てにおいて、平均得点が比較可能な調査回以降、最も高くなっている」などの説明があった。







「届出設置制度」の見直し議論

4月から厳格な℃謔闊オい承認

大学分科会大学教育部会




 中央教育審議会の大学分科会大学教育部会(部会長=佐々木雄太・名古屋経済大学・名古屋経済大学短期大学部学長)は平成25年12月13日、文部科学省内で第27回会合を開いた。主要な議題は、届出設置制度の見直し、インターネット等のみで授業を行う大学に関連した設置基準の改正の2件。

 学部・学科等を設置する際、学位の種類や分野が既存のものから変更されない場合は、事前に届け出れば認可審査無しで設置できる。しかしこの届出設置制度には「学問分野のくくり方が大きいため、専門性が異なるものも設置できる」「学際分野の見なし規定により、2段階の届出で全く異なる分野のものにできる」という抜け道が存在する。そのため「保健衛生学分野について分野の分割を図る」「複合分野が明確なものは学際分野ではなく各分野の複合体として扱う」等の見直しの方向性が事務局から示され、部会として承認した。26年4月の施行を目指す。

 インターネット等のみで授業を行う大学は現在、「インターネット大学に関する特区」においてのみ、大学通信教育設置基準に定められた校舎等の面積基準を満たさなくても設置可能となっている。これを全国展開するというのが改正の趣旨。改正事項以外に留意事項として、面積基準を満たさない場合でも教育研究に必要な校舎を備える、学生の心理面等に対し十分に配慮する、同時双方向の手段を導入して教員と学生との対面性を補完する等を示している。この改正案を部会として承認、26年4月に施行される見込みとなった。ただし多数の委員から「設置基準の根本的な見直しが必要」との意見が出ており、今後の課題とされた。







教科書採択の改善で「意見のまとめ案」を了承

私立学校の採択結果・理由公表

努力義務化が有力?

初等中等教育分科会




 中央教育審議会の初等中等教育分科会(分科会長=小川正人・放送大学教養学部教授)は平成25年12月16日、文部科学省内で第87回会合を開き、教科書採択の改善、OECDのPISA2012調査結果、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」について討議した。このうち教科書採択の改善については前回会合(11月28日)の議論を基に同省が作成した「意見のまとめ案」が提示、検討された。

 同省が提示した「意見のまとめ案」は、@共同採択に係る協議ルールの明確化A採択地区の設定単位の柔軟化B採択結果・理由等の公表が柱。このうち@の共同採択に係る協議ルールの明確化については、共同採択地区内の自治体間で意見が一致せず採択教科書が決まらないため、国から教科書の無償給付ができないといった事態を防ぐため、共同採択地区に関しては、地方自治法に規定する「管理執行協議会」(=協議会が行う事務の管理・執行が、関係普通地方公共団体の執行機関が管理・執行したものとして効力を有する)の設置を義務化する。実際、沖縄県の八重山地区でこうした問題が発生している。また、Aの採択地区の設定単位の柔軟化については、市町村合併で郡という行政単位が変質しつつあるため、従来の設定単位「市郡」を「市町村」に変更すること、都道府県教育委員会が採択地区の設定を行う際には市町村教育委員会の教科書の研究能力等を総合的に勘案し設定することとした。Bの採択結果・理由等の公表に関しては、私立学校の場合、採択について説明責任を負うべき対象等が教育委員会とは異なることなどから配慮の必要性を指摘している。この点について文科省は、私立学校については、採択結果・理由等の公表は義務ではなく努力義務とすることが有力と説明した。

 こうした整理に委員からは、都道府県が共同採択地区を決めることにもう少し言及すべきだとする意見や、教科書のデジタル化を早期に議論すべきだといった意見が出されたが、最終的にはこの日出された委員の意見に沿って文言の一部加筆、修正を小川分科会長に一任する形で意見をまとめることが了承された。

 同省が12月13日に公表した「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(1面参照)に関しては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて小学校から英語教育を拡充していく内容で、具体的には小学校3、4年生から週1〜2コマの活動型の授業を行い、5、6年生からは週に3コマ程度教科型の授業を行い、中学校からは英語の授業は英語で行うことを基本とし、小学校から高校までを通じて一貫した学習到達目標を設定、同時に日本の伝統文化や歴史を重視するなど日本人としてのアイデンティティーに関する教育も充実していく。また全ての英語教員に英検準1級、TOEFLiBT80点程度以上の英語力を求めていく。

 こうした方針に、初等中等教育分科会の委員からは、「基本的には大変結構だが、ビジネスの面で経験のある人も教員として活用を」といった肯定的な意見が聞かれる一方、「(英語教育の拡充は)生徒全員に必要なのか。小3から英語嫌いを作らないか。また教員を育てられるのか」「英語の授業時間を増やす分、他のものを削れるのか」「中学校で例えば文法を英語で教えれば生徒たちは理解できず、相当の学力低下を招く恐れがある」といった厳しい指摘も聞かれた。

 PISA2012調査結果については(本紙12月13日号参照)、委員から、「学校教育の現場では学習意欲(の喚起)が一番置き去りにされてきた」「今回の結果と教育課程の在り方の関わりを緻密に分析してほしい」「(成績の)ランキングだけで右往左往すべきではない。冷静な対応が必要」といった意見が聞かれた。







JD制度に関する審議結果まとめる

4月にも大学設置基準改正

大学分科会グローバル化WG




 中央教育審議会大学分科会の「大学のグローバル化に関するワーキンググループ」(主査=二宮皓・比治山大学・比治山短期大学部学長)が平成25年12月17日に第5回会合を開き、ジョイント・ディグリー(JD)制度に関する審議をまとめた。24日に大学分科会に報告する。以後、26年4月を目途に大学設置基準を改正、準備の整った大学から順次JDプログラムを開設可能にするとのスケジュールも示した。

 JDとは大学連名の学位。同WGの案は、大学設置基準および学位授与に関する規則を改正し、日本の大学が外国の大学と連名で学位を授与することを可能にする。制度上は「日本の大学が学位を授与する」形なので国家間の法制度の調整が不要で、速やかに実施できる。これに関連して、大学設置・学校法人審議会大学設置分科会の下に国際化対応小委員会の新設が検討されている旨の報告があった。JD等に備えて、高等教育の国際化の動向を踏まえた設置認可申請の在り方等を検討する小委員会で、24日の大学分科会を踏まえて設置準備が進められる。また、「海外キャンパス(海外校)制度」が全く活用されていない現状が議題となり、その設置認可の柔軟化や、海外校設置の目的、規模等について議論された。

 この日の会合では他に、名古屋大学の濱口道成総長と、同志社大学国際連携推進機構の西岡徹事務部長が発表を行った。両校は国際化拠点整備事業(グローバル30)採択校で、濱口総長は「アジア諸国の国家中枢人材養成プログラム」等の名古屋大の取り組みを解説。西岡事務部長は同志社大の留学生受け入れ体制整備について解説した。



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