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記事2012年7月13日 2244号 (2面) 
日本私立大学連盟 京都で学長会議を開催
明石康氏が基調講演
グローバル人材養成でパネル討議、大震災復興の歩み報告も
 日本私立大学連盟(会長=清家篤・慶應義塾長)は六月三十日、七月一日の二日間、京都市のリーガロイヤルホテル京都で、今年度の第一回学長会議を開いた。テーマは「多様なグローバル人材育成のための教学諸制度改革」。加盟大学から学長ら約八十人が参加。元国連事務次長で、国際文化会館理事長の明石康氏による基調講演、パネルディスカッション、グループ討議などが行われた。

 会議の担当理事である川口清史・立命館総長・大学長が発題を行った。川口総長は、グローバル人材養成が、国家戦略会議の民間議員からの提言や、大学改革実行プラン等の大きな柱の一つになっている点に触れ「何がグローバル人材か、という共通の認識を作り上げ、学長会議として、教学の仕組み全体をどう考えるかという視点から考えたい」と述べた。
 さらに「国際的質評価と同時に、何を国際的競争力として世界の留学生市場に出ていくのか。中間層のグローバル化をどう考えるかも議論したい」と問題提起した。
 続いて、明石氏が基調講演を行った。まず、自身の国際経験に照らし合わせて、グローバル人材の最も大事な要素として、チャレンジ精神、異文化への理解・寛容性、限りない知的好奇心―を挙げた。
 日本の英語教育については、「しゃべる」「きく」に重点が置かれすぎて、会話の中身や読書、聴取能力の重要性がやや軽視されているのではないかと指摘。国際的なコミュニケーションで重要な点として「しっかりとした考えを持つこと、相手が何を言っているかをきちんと理解し把握する能力、これが先だ」と述べた。
 日本の高等教育の問題点としては「各国の優秀な人材間での熾(し)烈(れつ)な戦いが経済力・経済成長を支配していく時代に、大学の乱立、大学院の整理が不十分であること、日本の教育予算の対GDP比がOECD加盟国中最低であることなどが当然問われてきている」と述べた。
 また最近よく使われる「空気が読めない」という言葉について「空気を読みすぎて発言したいことも発言せず、ともかくコンセンサスを作り上げることに集中する日本的な優先順位が、国際的な場でも発言したがらない、手を挙げたがらないという風潮に影響しているのではないか」と苦言を呈した。
 戦後のグローバル人材を代表する人物として、エコノミストの大来佐武郎氏を挙げ「国際人とは、要するに、外国の人と一緒に机を並べて仕事をして、それに違和感を感じない人だろう」という大来氏の言葉を紹介した。
 最後に、国際的に活躍するための要件を「明石の七戒」として紹介。@近代日本の歴史をプラス面、マイナス面含めて正しく理解するA日本は島国、独りよがりの点が多いことを意識するB言葉に対する敏感さを持つC文化を超えた交渉事では、相手のメンツを重んじて、退路を用意するDなまりはアイデンティティー、日本なまりの英語でも気にしないE他国の国民性をステレオタイプに決めつけないF自分を突き放し、相対化し、客観視する能力―を挙げ、講演を締めくくった。
 パネルディスカッションでは、三つの大学から、各大学でのグローバル人材養成の取り組みが紹介されたほか、文部科学省高等教育局の板東久美子局長が同省の施策等について説明した。
 早稲田大学の橋本周司副総長は、英語による学位プログラムの導入や海外の大学との交流協定、来春からのクオーター制の導入などを紹介した。
 国際基督教大学の日比谷潤子学長は、同大学の特徴であるリベラルアーツ教育と、それにふさわしい英語教育として今年度から導入した全学生必修の英語プログラムなどを説明した。
 立命館アジア太平洋大学の是永駿学長は、日本にあって、世界の八十四の国・地域の学生が学び、教員の半数も外国籍という同大学の環境を紹介し、多文化・多言語のキャンパスで学生が四年間を過ごす意義を強調した。
 フロアからは、多国籍教員の採用方法、新プログラム導入に当たってのスタッフや予算のやりくり、日本人学生のアジアへの留学促進策、留学生の選抜・獲得方法、ジョイント・ディグリーなどについて質問、意見が出された。
 東日本大震災で被災した石巻専修大学の坂田隆学長からは、昨夏の学長会議以降の同大学の復興の歩みが報告された。
 同大学が取り組む「復興共生プロジェクト」の一環として三月に刊行した記録集「東日本大震災石巻専修大学報告書・激震に揺るがず」(同大学HPからダウンロード可能)を紹介。「各大学で防災・復興を考えるときにわれわれのデータを使って研究していただきたい」と述べた。


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