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記事2012年6月3日 2240号 (1面) 
国家戦略会議民間議員の提言受けシンポジウム開催
日本私立大学団体連
OECD諸国と比べ低い日本の大学進学率
地方大学なくなれば日本は衰退
 四月九日の「国家戦略会議」(議長=野田佳彦総理)で民間議員五人が、大学の統廃合の促進や私学助成の配分の見直しなど高等教育の抜本改革を求める提言を提出したのを受けて、日本私立大学団体連合会(会長=清家篤・慶應義塾長)は、五月十七日、急遽、東京・渋谷区の学校法人文化学園を会場に、シンポジウム「二十一世紀社会の持続的発展と次世代の育成を支える私立大学」を開催した。
 この日は、多数の私大関係者らが詰めかける中で、同会議民間議員の一人である古賀伸明・日本労働組合総連合会長、前文部科学副大臣の鈴木寛・民主党政策調査会副会長、私大団体連副会長の黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長の三人がパネリストになり、会場参加者も交え、意見交換を行った。コーディネーターは清家会長。
 この中で古賀氏は、昨年十月に設立された国家戦略会議は、税財政の骨格などを定める日本再生戦略を策定中で、六月までに取りまとめを行うこと、また、大学の統廃合に関しては、「日本の再生のカギは人材だが、産業界の求める人材と教育界が輩出する人材にはミスマッチがある。皆が大学に行かなければいけないのか」などと語り、教育システムの抜本改革の必要性を強調した。
 一方、鈴木氏は、「日本の大学進学率はOECD諸国と比べて低く、韓国では高卒で社会に出る人は極めて少ない。大学進学率は都道府県間でも格差が大きい。大学の統廃合には無理がある。大学間の連携が重要で、現在、着手している改革を加速して行うこと、それを社会と共有することが重要だ。わが国はソフトパワー立国に生まれ変わることが必要であり、投資がなければリターンもない」などと述べた。
 一方、私大を代表して意見を述べた黒田氏は、私立大学が我が国の発展に果たしてきた役割等を説明した上で、しばしば指摘される地方大学の定員割れに関しては一大学では地方の人口構造を変えられず、厳しい中で地方の私立大学は地域と連携し大学経営を維持していること、地方の大学をなくしたら、日本は衰退すると指摘。また、私学助成の配分にメリハリを付けるべきだとの提言には、既にそうした配分が行われていることや、補助金は私大の経常経費の一割強に過ぎないことなどを指摘、それでもメリハリを付けるのか、と語った。さらに、小さな町でも幼稚園や保育所があり、大学等は教員や保育士を送り出す必要があるものの、例えば定員十人の教員養成は設置基準上、許されず補助金はもらえない、地方の私立大学の定員割れにはそうした背景があることなどを説明し、参加者らの理解を求めた。
 シンポジウムでは会場からも相次いで意見が出された。
 そのうち鳥居泰彦・慶應義塾学事顧問は私立大学生一人当たりには国立大学生の約十一分の一の公的資金しかないことなどを説明、こうした格差の是正を訴えた。


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