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記事2012年6月3日 2240号 (1面) 
株立校の学校法人化で文科省が対応方針
「設置者変更」扱いに弾力化
 株立校存続校には適切な教育活動徹底など要請
 政府の構造改革特別区域推進本部の評価・調査委員会教育部会(若月秀夫部会長=品川区教育委員会教育長)は、五月二十五日、都内で部会を開き、特区に限り株式会社にも認めている学校設置事業(特例措置番号816)に関して、文部科学省の榎本剛・大臣官房総務課行政改革推進室長らから、@株式会社立学校が学校法人化を希望した場合の対応方針A株式会社のままで学校経営を継続することを希望する学校についての対応方針等について聴取し、協議を行った。
 その結果、教育部会では、同省の提示した、学校法人化希望校への支援策や、株式会社立学校として継続を希望する学校には問題の是正を求めていくこと、新規校には特区認定の適合要件を明確化するなどの措置を受け入れ、その上で「現状では(同特例措置の)全国展開は困難」との方針を確認した。教育部会はこうした方向で次回、六月十五日の部会で評価意見を取りまとめることにしており、株式会社立学校問題に一定の区切りがつく見通しだ。
 株式会社立学校に関しては、文科省の調査で広域通信制高校の一部で不適切な実態が判明したほか、廃止、赤字経営に陥る大学も出るなど多くの弊害≠ェ確認されたことなどから、文科省や教育関係者が問題視、最近では同特例措置の廃止を求める声も上がっていた。そうした中で教育部会では平成二十四年度の早い段階で特例措置「学校設置会社による学校設置事業」の今後の取り扱い方針をまとめる予定にしていた。
 今年四月、文科省が教育部会の依頼を受け行った調査では、株式会社立の大学五校中、一校(二〇%)が学校法人化を希望、また株式会社立小学校・高校では、二十一校中十八校(八六%)が学校法人化を希望、または学校法人化に魅力を感じる、と回答した。
 株式会社立小学校・高校で学校法人化を希望するなどした十八校の内訳は、「学校法人化の具体的準備をしている」が一校、「学校法人化の可能性を念頭に自治体と相談している」が三校、「学校法人化の可能性を念頭においているが、自治体との相談までは至っていない」が七校、「現段階において学校法人化は考えていないが、魅力は感じる」が七校、「学校法人化することは考えていない」が三校だった。
 学校法人化について大学の場合、五校中二校が「資金確保」を、三校が「株主の同意」を課題に挙げていた。
 小学校・高校の場合では、「株式会社立から学校法人立への移行手続きが明確ではない(学校法人の設置認可とその基準の取り扱い)」を課題に挙げた学校が九校、「県において、校地・校舎の自己所有を認可条件にする場合がある」を課題とした学校が七校、「学校法人化を進める情報が不足している」を課題とした学校が七校だった。そのほか「株主の同意」を挙げた学校が四校あった。
 文科省では特区の認定地方公共団体にも情報不足、高校の管理運営の知見がない状況が見られる、などと指摘している。
 こうしたことから、文科省では、同省が所管する大学については、@学校法人への移行の場合は、新たな学校の「設置」ではなく、「設置者変更」とする弾力化を実施するA校地・校舎が借用の場合でも学校法人立を認可できるよう措置(平成十九年に改正)B文科省に新たに学校法人化移行のための相談窓口を設ける―との支援策を提示。また、小学校・高校については、所管する都道府県に学校法人化を円滑に進めるよう要請する。
 具体的には@学校法人への移行に当たり、学校の「設置」認可又は「設置者変更」認可が可能であることを明確化、A「設置者変更」認可とすることで、寄付行為の認可基準を柔軟にできることを明確化、B校地・校舎が認定地方公共団体からの借用の場合に、自己所有と同等と見なす、C認定地方公共団体への情報提供を強化し、学校法人制度への知識を深める、D文科省に新たに学校法人化移行のための相談窓口を設ける。
 一方、株式会社のままで学校運営の継続を希望する学校に関しては、認定地方公共団体に対して指導体制の強化、学校評価実施と結果公表の徹底を要請、また、広域通信制高校に対して適切な教育活動を、大学に対しては質保証の徹底を要請する。
 また、新規の株式会社立学校の特区認定に当たっては既存の学校に関して是正が必要とした点を含め適合要件を明確化することが必要としている。
 さらに既存の株式会社立の広域通信制高校に関して文科省では、「株立学校の教育活動は特区区域内で行われる必要があるが、これに違反して、特区区域外の民間教育施設で添削指導等を実施する例が見られる」と指摘。特区区域外で面接指導等の教育活動ができないことは、内閣府が平成十八年八月一日に認定地方公共団体に通知「株式会社立通信制高校に係る特定事業に関する取扱いについて」を発出している、としている。


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