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記事2012年6月13日 2241号 (1面) 
平野文科相 高校早期卒業制度創設を表明
第5回国家戦略会議で
六三三制を柔軟化 教育関係者からは戸惑いの声
 国家戦略会議(議長=野田佳彦・内閣総理大臣)の第五回会合が六月四日、総理官邸で開かれ、平野博文・文部科学大臣が今後の教育システム改革方針を発表した。四月九日の第三回会合で、野田総理が、同日の会議で民間議員から出された提言を基に社会構造の変化を踏まえた教育システム改革の方針を示すよう求めていたことから、今回の発表となったもの。改革方針には、高校早期卒業制度の創設など文部科学省の中央教育審議会でも本格的議論を行っていない内容もあり、改革方針に対しては教育関係者から戸惑いの声が上がっている。

 平野大臣が発表した教育改革方針「社会の期待に応える教育改革の推進」のポイントは七つ。
 七つのポイントとは、@小中一貫教育制度・高校早期卒業制度の創設(六三三制の柔軟化)、少人数教育A大学入試改革B大学の教育機能の再構築とミスマッチ解消C英語力・グローバル力の向上D国立大学のミッション再定義と重点支援E学生の七五%を占める私学の質的充実に向けた支援・メリハリある配分F世界で戦える「リサーチ・ユニバーシティ」の倍増、地域再生拠点としての大学の機能強化。
 このうち@の六三三制の柔軟化に関しては、平成二十四年度中を目途に「小中一貫教育制度」を創設、高校段階では「早期卒業制度」の創設(大学への早期入学促進)を検討し、二十五年度中を目途に結論を出すなど高大接続を強化する。また、中高一貫教育についても引き続き推進する方針で、さらに生徒の能力・適性・進路等に応じた高校の類型を念頭に置いた教育の改善・充実方策を二十四年度中を目途に策定、就業実習の抜本的拡充など専門高校等における産業界との連携強化も打ち出している。そのほか初等中等教育に関しては全国学力・学習状況調査の充実や、高校段階での生徒の学力状況を多面的・客観的に把握するさまざまな仕組みを検討し、二十五年度中を目途に結論を出す方針、としている。
 Eの私学の質的充実に向けた支援等では、私学助成に関して二十四年度中に社会・経済の新たな成長に向けた取り組みに特別補助を充実、建学の精神・私学の役割・特色による教育改革の新展開のための環境整備、教育情報・財務情報公表の促進、先進的ガバナンス改革に対する特別補助の充実、管理運営に課題のある法人への対応の厳格化、教育条件向上・経営改善に向けた適正な定員管理の促進などを実施、としている。また、地域再生の核となる大学づくり等を通じて日本の人材の質を高める取り組みを行う大学に一層の重点投資を行う一方で、社会変化に適切に対応できない大学等の退場についての法令上の措置についても必要に応じ検討していく、としている。
 Dの国立大学改革に関しては、海外大学と連携し新共同学部研究科や新たな教育組織を設置するなどしてグローバル化を加速するほか、地域別や機能別に複数の大学を設置する新国立大学法人を設置、スケールメリットを生かして教育環境の改善に取り組むとしている。国公私立大学等が共同出資して教育研究組織を設置する改革も打ち出している。
 平野大臣のこうした発表に、野田総理からは、六月四日の第五回会合の議論も踏まえて改革の道筋を一層明確化し、数値目標や工程表等についてもさらに検討を深めるよう指示があった。
 政府では官民を挙げて教育システム改革、グローバル人材育成を、スピード感を持って進めていく考えで、平野大臣の改革方針等は早ければ六月中にも政府が策定する日本再生戦略に盛り込まれることになる。ただし具体化に当たっては、中教審での議論や法制化などのプロセスがあり、紆(う)余(よ)曲折も予想される。


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