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記事2012年5月3日 2238号 (1面) 
国家戦略会議民間議員提言受け 私大団体連等から意見聴取
民主党私学振興推進議員連盟
清家会長が意見表明 私大は地域の活性化等に貢献
 民主党の「私学振興推進議員連盟」(木義明会長=元文部科学大臣)は、五月九日、衆議院第一議員会館で会合を開き四月九日の国家戦略会議(議長=野田佳彦総理)で民間議員から、大学の統廃合促進や私学助成の見直しなどを求める提言が出されたため、文部科学省と日本私立大学団体連合会からこの問題に対する意見等を聴取した。私大団体連からは清家篤会長(慶應義塾塾長)が出席、意見を述べた。

 この日の会合では、初めに内閣府から、四月九日の国家戦略会議における大学の統廃合促進や私学助成の見直しに関する審議状況などが説明された。続いて文部科学省の意見が説明された。同省からは高井美穂副大臣と城井崇大臣政務官が出席した。このうち私立大学の現状に関しては、大学数や学生数の増加は、短期大学が四年制大学に移行したことなどによるもので、大学・短期大学を合わせると、大学数、学生数は近年、減少していること、世界的には急速に高等教育機関の学生数が増加しており、近年、多くの国では大学進学率が伸びていること(別表参照)、高校卒などと比べて大学は正社員として定着する比率が高いことなどが説明された。また、私立大学を設置するときの校地・校舎などの施設設備のすべては、設置者、寄附者が私財を提供して負担していること(助成はゼロ)、設置完成年度まで(当初は四年間)は助成ゼロで、その後も私学助成は経常経費の約一割であること、寄附者への配当は禁止(黒字はすべて教育研究に)、学校法人が解散する場合には、残余財産は他の教育事業または国に帰属すること(寄附者には返還されない)、さらに私大の収入は学納金に大きく依存しており、学生を惹きつけなければ、生き残れない経営構造となっていることなどが説明された。
 続いて清家私大団体連会長は、「二十一世紀社会の持続的発展と次世代の育成を支える私立大学―国家戦略会議における民間議員の意見を受けて―」との意見書(別掲)を提出、それに沿って、日本の高等教育は、最小限の国費負担で担われている特異な状況にあることや、私学助成は私立大学の健全な発展と教育研究を支える基盤的経費の性格を有していること、私立大学は地域の人材育成と再生・活性化に多大な貢献をしていることなどを説明。加えて私立大学の経営においては大学の自主性尊重が大前提であること、私立大学は特色ある教育研究、人材育成、経営の強化充実、透明性向上のための情報公開の促進、国公私の枠組みを超えた連携等の自律的な改革に自覚と責任をもって全力で取り組む考えであることを力説した。四月九日の国家戦略会議では野田総理が、平野博文・文部科学大臣に社会構造の変化を踏まえた教育システムの改革に向けた取り組みを五月に開かれる同会議に報告するよう指示している。


21世紀社会の持続的発展と次世代の育成を支える私立大学
−国家戦略会議における民間議員の意見を受けて−
平成24年5月9日
日本私立大学団体連合会

 本連合会は、このたびの国家戦略会議に提出された民間議員の意見について、そのご努力を多としつつ、わが国が活力ある健全な国家として持続的に発展していくためには、多様で活力ある私立大学の振興が不可欠であるとの観点から、私立大学の実情やその改革の基本について一層の理解をたまわりたく、ここにその意見を表明する。

○日本の高等教育は、最小限の国費負担で担われている特異な状況
 わが国では、私立大学が大学生の約4分の3を教育している。これに対し、私立大学への国費投入額は、国立大学の約4分の1という水準にとどまっている。換言すれば、わが国は、他国では類例のない極めて小さな国費負担で高等教育が担われている。

○私学助成は、私立大学の健全な発達と教育研究を支える基盤的経費の性格
 国費による私学助成は、こうした公教育を担う私立大学の基盤的経費を支援するために制度化されたものである。この点で競争的資金やプロジェクト経費とは異なる性格を有している。しかもその根拠となる私立学校振興助成法が2分の1補助を目標としているのに対して、現状の補助割合は10分の1に過ぎない。基盤的経費としての性格を明確化した改革が、民主党政権のもとで平成23年度に行われたばかりである。

○建学の理念にもとづく私立大学の多様性が社会の持続可能性を担保
 私立の学校は、それぞれの建学理念に基づいて個性のある教育と運営を行っている。このことが、日本の教育、特に高等教育に多様性をもたらすことに大きく寄与している。これは、今日のような変化の激しい多様性の時代に、社会の持続可能性を担保するためにますます重要となっている。

○私立大学は地域の人材育成と再生・活性化に多大な貢献
 地方の私立大学は、地域社会の人材育成や文化基盤として極めて重要な役割を果たしており、地域の再生と活性化に不可欠な存在である。今回の東日本大震災において、各地域の私立大学が復興の拠点として不可欠な役割を果たしたように、地域の私立大学は教育、研究の範囲を超えて地域に大きく貢献している。

○私立大学の経営においては、大学の自主性尊重が大前提
 新たに大学法人となった国立大学とは異なり、私立大学はその設立のときから法人として運営されている。その経営のあり方もまた、教育と同様、個々の私立大学ごとに多様である。これを国の方針などで一定方向に誘導することは、むしろ画一化を進めることになる。大学間の連携・統合等を含めて私立大学の自主性を尊重すべきである。

○私立大学改革に関する自覚と責任
 大学に対する各方面からの様々な期待や要望を真摯に受け止め、私ども私立大学としても、特色ある教育研究、人材育成、経営の強化充実、透明性向上のための情報公表の促進、国公私の枠組みを超えた連携等の自律的な改革に、自覚と責任を持って全力で取り組む所存である。
 教育は国家の礎であり、私立大学の充実・発展による高等教育の振興こそ、わが国の再生と次代を拓く原動力であることについては、政府におかれても大学関係者にあっても共通理解を得られることであると確信している。わが国が活力ある健全な国家として持続的に発展していくために必要な、多様で活力に溢れる人材の育成のため、社会の様々な関係者と手を携え、協働して取り組むことが重要であると認識している。政府にはそうした私立大学の自律的な改革を支援する政策を望みたい。


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