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記事2012年3月23日 2233号 (1面) 
教員養成制度等の見直しで中教審WGが報告案協議
教職大学院の充実・活用前面に
国公私立大の一般の修士課程にも連携を求める
 中央教育審議会・教員の資質能力向上特別部会の基本制度ワーキンググループ(座長=横須賀薫・十文字学園女子大学長、以下、WGと表記)は、三月十六日、都内で七回目の会合を開き、「報告案」について最終の検討を行った。委員からは、報告の内容・文言に関してさまざまな意見が出されたが、最終的には横須賀座長と文部科学省に一任することとし、近く特別部会に報告する予定。
 報告案は、@「現状と課題」A「改革の方向性」B「当面の改善方策〜学校・教育委員会と大学の連携・協働による高度化」の三部構成。全体で二十一ページだが、「現状と課題」と「改革の方向性」に約九ページ、「当面の改善方策」に約十二ページを充てている。「改革の方向性」の報告内容は、WGが設置される前の特別部会の検討内容から大きな進展は見られず、WGが「当面の改善方策」に重点を置いて検討を進めてきたと感じさせる内容となっている。
 このうち「改革の方向性」の中の教員養成改革に関しては、教員養成を修士レベル化し、教員を高度専門職業人として明確に位置付けること、教員免許制度改革では、標準的な免許状とする「一般免許状(仮称)」を創設、同時に当面は「基礎免許状(仮称)」も創設する、としている。一般免許状は、探求力、教科や教職に関する高度な専門的知識、基礎的・基本的な知識・技能の習得に加え思考力・判断力・表現力の育成など新たな学びを支える指導方法、コミュニケーション等を保証する免許状と位置付け、基礎免許状は、教職への使命感と教育的愛情、教科に関する専門的な知識・技能、教職に関する基礎的な知識・技能を保証するもの、としている。その上で一般免許状と基礎免許状との関係については、@一般免許状取得後に教員として採用A基礎免許状を取得し、教員採用直後に初任者研修と連携・融合した修士レベルの課程の修了により一般免許状を取得B基礎免許状を取得し、教員採用後一定期間の内に修士レベルの課程等での学修により、一般免許状を取得――の三類型に整理している。その上でそれぞれにメリット、デメリットがあり、地域の実情に応じたさまざまな試行の積み重ねが必要と指摘している。そのほか「専門免許状(仮称)」の創設も提案している。
 報告は、教員免許更新制や幼稚園教諭の免許の在り方、義務教育免許状など学校種をまとめた教員免許状の創設など数多くの課題についてごく簡単な記述にとどまっており、教員免許制度の全般的な改正にはなお多くの検討時間が必要だ。
 その一方で、当面の改善方策に関しては、教科と教職の架橋の推進、教職大学院制度の発展・拡充、実践力向上の観点からの修士課程のカリキュラム改革の推進、専修免許状の在り方の見直しなどの必要性を指摘。その中でも特に理論と実践の往還を柱とする教職大学院を核とした改善の重要性を強調しており、横須賀座長は、「今ある教職大学院がすべて(期待している)役割を担えるとは思わないが、教職大学院制度そのものについて前へ進む方向で検討すべきだ。国立の教職系大学院は目を覚ますべきだ」とも語った。報告では、「国立教員養成系大学・学部及びこれに基礎を置く教育学研究科は今後、教職大学院を主体とした組織体制へと移行していくことが求められる」と指摘。国立教員養成系以外の国公私立大学の一般の修士課程については、教職大学院との連携プログラムにより、理論と実践の架橋を重視した実習や実践科目を導入するなど、カリキュラム改革の推進を求めている。
 このほか、「当面の改善方策」では、採用直後の一般免許状取得を想定して初任者研修の改善を図ること、複数の教育委員会による教員採用の共同実施、十年経験者研修やその他の任命権者が実施する研修等についてプログラム化・単位化の推進、校内研修や自主研修の活性化、専門免許状を想定しつつ管理職としての職能開発のシステム化などの必要性を指摘。
 また複雑・多様化する教育課題に向け多様な人材を教員として迎え、チームで対応していくための仕組み作り、外部人材の幅広い登用のために特別免許状や特別非常勤講師制度の活用等の一層の推進、特別支援教育の専門性向上などを提言している。


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