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全私学新聞

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記事2012年2月23日 2230号 (1面) 
総合こども園への株式会社参入
全私学連合が反対の意向
学校として位置づけ 重大な禍根残す
民主党私学振興推進議連で表明

 民主党の私学振興推進議員連盟(木義明会長=衆議院議員、元文部科学大臣)は、二月十五日、衆議院議員会館内で総会を開き、全私学連合から、幼保一体化で創設される「総合こども園(仮称)」への株式会社参入について意見を聴取した。この中で全私学連合の清家篤代表は学校教育を行う教育制度として位置付けられる「総合こども園」への株式会社参入については強く反対、との意向を表明した。出席した民主党議員からは待機児童解消のため株式会社の参入に理解を求める意見や、政府に再検討を働きかけていくべきだとの意見などが聞かれた。
 この日、全私学連合からは清家篤代表、同連合の構成団体である全日本私立幼稚園連合会の香川敬会長と北條泰雅副会長、日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長等が出席した。この中で清家代表は、「教育はすぐれて公共財。社会的責任の自覚が必要。利益配分を目的とした株式会社で(総合こども園を)運用すべきではない。学校法人では利益は(教育への)再投資にのみ振り向けられる。海外では株式会社の学校教育参入で問題が発生している例も見られる」と語り、株式会社の学校教育参入について再考を要請した。
 続いて全日私幼連の香川会長は、「先生方のご所見を伺いたい」としたうえで、政府の基本制度ワーキングチームが「子ども・子育て新システムに関する基本制度とりまとめ」を決定する際には、関係団体と丁寧に打ち合わせるとの政府側の約束がほごにされたことに強い不満を表明。北條副会長は、「学校は公の性格。教育基本法第六条から言っても株式会社の参入はありえない」と述べたほか、関係団体との打ち合わせもないままに「とりまとめ」の記者発表の直前に予定を知らされ、急ぎ七項目からなる意見書を政府に提出したものの、それについても調整はなく、「納得しがたい気持ち」と、現在の心境を吐露した。
 中高連の吉田会長は、「私立学校は寄附行為をし、それを命がけで守っている。学校は未来永(えい)劫(ごう)維持されなくてはいけない。株式会社はなぜ寄附行為をしないでいいのか。しかも撤退要件まで定めている。学校の売買が行われる。次の株式会社で教育の中身が変わってしまうのはおかしい」と語った。
 こうした私立学校関係者の声に、文部科学省の神本美恵子大臣政務官は「(文部科学省が)株式会社が入ることに非常に慎重であることに変わりはないが、保育所にはすでに株式会社が参入していた」とし、総合こども園に関して株式会社の参入規制は難しいとの見方を明らかにした。
 出席の民主党国会議員からは、「株式会社が上げた利益から寄附行為をすればいい。ただ多くの人に働いてもらって税金を払ってもらうという政策もある」「学校法人の取り扱いが筋。政府側を押していくべきだ」「議連で意見を取りまとめて政調に出してほしい。党内でもう一度議論すべきだ」といった意見も聞かれたが、待機児童解消のため株式会社もやむなしという意見も複数の議員から聞かれた。最後に同議連幹事長の鈴木寛・参議院議員(前文部科学副大臣)は、「市場万能主義の混乱を立て直すことはわれわれが国民から託されたこと。二月十四日、教育特区における学校設置会社による学校設置事業の評価が延長戦となった。内閣府にわが政権の考え方が伝えきれていない。株式会社の参入は厚生労働行政の中で認められている。(保育所への株式会社の参入を認めるにあたって)どういう議論があったのか私も勉強してみたい。(事前の打ち合わせに関しては)コミュニケーションが十分に取れていなかった。政府を挙げて十分に反省すべきだ。内閣府の園田康博大臣政務官にも伝えたい」と語った。


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