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記事2012年12月23日 2259号 (1面) 
高校の質保証等へ「共通テスト」導入の公算
任意で、一定層を対象に 結果を学習指導にも生かす方針
中央教育審議会初等中等教育分科会の高等学校教育部会(部会長=小川正人・放送大学教養学部教授)は十二月十七日、文部科学省で十六回目となる部会を開き、「審議経過」の骨子案を検討した。同部会のこれまでの審議では、「全ての生徒に共通して身に付けさせるもの(コア)」が明確化しないまま、高校教育の質保証等の観点から「共通テスト」の実施が検討されてきたが、この日の審議でも、「高校教育の現状を把握するためのテストなのか、高校生一人一人の質保証のテストなのか、あいまいのまま来ている」「高校教育はこのままでいいのかというところがあったと思うが、どうやって(学力等を)育成するのか、どういう活動で(生徒は)身に付けるのかが欠落している」など、共通テスト実施論先行に疑問を投げかける意見が複数の委員から聞かれた。
 これに対して安彦忠彦副部会長(神奈川大学特別招聘教授)は、「大学関係者や産業界からは高校教育についてよくやっているという声より不信感の声の方が大きい。共通テストは社会的不信感を払拭する手段の一つ。社会的に信用を回復する必要がある」などと語り、また、高校教育の質保証の観点から共通テスト実施の必要性を強く主張している金子元久・筑波大学大学研究センター教授は、「高校生に学習の習慣ができていないのが問題。大学では入試という形では学力保証ができない」などと語り、高校における共通テストの必要性を強調した。そうした意見がある一方で、「骨子案」には、「共通に目指すべき到達目標の明確化を図るとともに、その到達度を把握する共通的な調査の仕組みを設け、全国の高校、全ての高校生が、それぞれの希望に応じて、この調査の機会にアクセスできるようにすることが望まれるところ」との記載がある。「共通テスト」の性格については委員ですら共通認識を持っていないようだ。
 こうした状況に小川部会長は審議の最後に、全国規模の調査(との文言)が誤解を招いているとした上で、「(共通テストは)全ての生徒を対象に、強制的にではない。任意とする。一定層を対象に基礎的な能力を確認する。結果を学習指導にフィードバックできるようにしたい」と語ったが、なお詳細は不明。現在の第六期中教審は平成二十五年一月三十一日に終了するため、同部会は一月二十九日に審議のまとめを行う見通し。
 なお骨子案は全体で七ページ。コアについての基本的な考え方や、高校教育の質保証に向けた評価の仕組みについての考え方など四項目からなっている。


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